糸球体腎炎
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糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん、英Glomerulonephritis)とは、腎疾患の一つで腎臓の炎症の一つ。
腎臓の炎症である腎炎は病理組織学的に炎症の首座がどこにあるかによって、糸球体腎炎、間質性腎炎、および腎盂腎炎に分類される。主に糸球体に炎症反応がみとめられるものを糸球体腎炎と呼ぶ。
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[編集] 種類
[編集] 溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)
連鎖球菌感染に続発して抗原抗体反応(アレルギーIII型)によって発症するび慢性の炎症である。溶血性連鎖球菌感染後に起こる腎炎が最も多い。小児や青年期に罹患する事が多く、先行する感染としては扁桃炎・咽頭炎等が大部分を占める。
[編集] 原因
A群β溶血性レンサ球菌感染症後に発症するものが大部分であり、この菌が抗原となる事で抗原抗体複合体を形成し、これが腎糸球体に付着することで炎症を引き起こす。
[編集] 症状
上気道感染の1~2週間後に発症する。前症状として全身倦怠感、頭痛、咽頭痛、悪心、嘔吐、下痢、便秘等を生じ、その後に主症状である浮腫、血尿、高血圧が診られ、尿量も減少する。
[編集] 検査
- 尿検査…蛋白尿・血尿・赤血球円柱尿が見られる。
- 細菌学的検査…鼻咽頭からβ-溶血連鎖球菌(溶連菌)を検出。
- 血清学的検査…ASO値の上昇。血清補体活性の低下 (CH50)。
- 腎機能検査…糸球体濾過の低下は見られるが、腎の血流量は正常。
[編集] 治療
食事制限として塩分、蛋白質、水分の摂取を制限する。また、薬物的には特効薬は無いが、感染の拡大防止としてのペニシリン・マクロライドの投薬を行うことがある。扁桃炎を繰り返す場合は扁桃の摘出も必要になる。なお治療率は小児で約90%以上、成人でも50~80%は完治する。
[編集] 診断のメモ
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- 顕微鏡的血尿も見られない場合は急性糸球体腎炎は考えにくい。
- ネフローゼ症候群を呈している場合も急性糸球体腎炎は考えにくい。
- 低補体血症が持続する場合は急性糸球体腎炎ではなく膜性増殖性糸球体腎炎を考える。
[編集] 慢性糸球体腎炎
急性糸球体腎炎の発症後、1年以上にわたって異常な尿所見や高血圧症状の持続するものを指す。また、発病時に明らかな腎炎症状は見えないが、1年以上異常尿所見の続くものも含む(ただし、膠原病・糖尿病性腎症・痛風腎・本態性高血圧・腎血管性高血圧・腎盂腎炎・起立性蛋白尿・中毒性腎症等の全身性疾患に因る物は除外する)。なお、進行により腎不全から尿毒症へと変化する。
[編集] 病型
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- 微小変化型
- 巣状糸球体硬化症
- 巣状糸球体炎
- メザンギウム増殖性糸球体腎炎
- 膜性糸球体腎炎
- 膜性増殖性糸球体腎炎
- 管内性増殖性糸球体腎炎
- 硬化性糸球体腎炎
- その他
[編集] 原因
不明。ただし、免疫機序が考えられている。
[編集] 症状
急性糸球体腎炎と同様である。
[編集] 検査
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- 尿検査…蛋白尿・顕微鏡的血尿が見られる。
- 血液生化学検査…総蛋白/総コレステロール比の低下(尿蛋白排泄の多い時)。尿素窒素/クレアチニン比の上昇(糸球体濾過値低下時)
- 腎機能検査…血清尿素窒素、血清クレアチニンの上昇。クレアチニンクリアランス(Ccr)の低下。
- 腎生検…病型の確定。
[編集] 治療
病状の進行が見られない場合は生活管理・食事療法を中心とし、薬物を補助的に用いる。病状の進行が見られる場合は、厳密な食事療法と薬物療法を組み合わせて用いる。薬物投与は蛋白尿に対してはジピリダモール、ネフローゼ症候群を呈する場合は副腎皮質ステロイドを使用する。また、高血圧の場合はα―メチルドーパを、浮腫の強い場合はフロセミドなどの利尿剤を投与する。