戦車 (タロット)
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戦車(せんしゃ、The Chariot)は、タロットの大アルカナに属するカードの1枚。カード番号は「7」。
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[編集] カードの概要
アーサー・エドワード・ウェイトのタロット図解における解説では「援軍・摂理・勝利・復讐」を意味するとされる。また、カバラに於けるヘブライ文字の神秘的解釈と関連付けた解釈では、ヘブライ文字ヘット(ח)を介して西洋占星術上では「巨蟹宮」と結び付けられ、生命の樹に於けるビナーとゲブラーのセフィラを結合する経に関連付けられている。
[編集] 絵の意味
「皇帝」などに描かれる男性的な権威的人物像と違い、このカードでは二輪の戦車に乗った若き王の姿が描かれる。一般的にこの若き王は、明確な目的を行動に移す第一歩を踏み出した場面として解釈が行われている。また数字の「7」は『運命』や『宿命』、『変容』などと大きく関わる数字であると考えられている。即ち創世記に記される創造行為は7つ(6つの段階と1つの休憩)であり、錬金術では7つの金属と7つの惑星の影響による7つの変容の段階があり、サイコロの向き合う面の和は全て「7」であり、今日にみられるスロットマシンは7 7 7である。
マルセイユ版に描かれる「戦車」では、黄金の冠と甲冑に身を包んだ若者が黄金の杖を手にし、赤と青の馬(戦車を引く動物はマルセイユ版を始め馬であることが多いが、ウェイト版では白と黒のスフィンクスである)を生やした車輪付きの台座に乗った構図で描かれている。また、台座には4本の柱が取り付けられ頭上の天蓋を支えている。
柱に注目すると、外側の2本は赤、内側の2本は青に塗られ、2頭の馬と同色である。この2頭の馬は、自然界全ての動物的エネルギーの肯定的側面と否定的側面のそれぞれと結び付けられ、身体的な側(赤)と精神的な側(青)を象徴していると考えられている。このため4本の柱は、人間の内面における様々な側面が一つの「戦車」に取り付けられることにより、ある一定の共通目標に向かって機能し始めたことを表している。
だが、台座に取り付けられた車輪は横向きであり、このままでは物理的に動くことができない。つまり、この若き王は車輪についても、真下に生える草木が踏み折られることも、自分の見つめる目標以外の何ものにも意識を向けていない未熟な若者を示している。さらに、この「戦車」に手綱が付いていないこと、車輪の向き、馬と台座が一体になっていること等から、“地上を走るための乗り物ではない”といった解釈が行われる。解釈の方向として、カードを見る者の精神世界を旅する為の象徴的イメージとする解釈、太陽神アポロンの駆る戦車や旧約聖書に登場する火の戦車などをモチーフとした解釈などが挙がる。
- 正位置の意味
- 勝利、征服、援軍、独立・解放。
- 逆位置の意味
- 暴走、不注意、好戦的。
[編集] 参考文献
- サリー・ニコルズ『ユングとタロット』ISBN 4-7835-1183-7
- C.G.ユング『心理学と錬金術(1)』ISBN 4-4093-3007-1