工具鋼
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工具鋼 (こうぐこう)とは、0.3~2.0%の炭素を含む鋼で、硬さと耐磨耗性に優れ、金属加工に用いられる刃物、治具、金型等に用いられる。日本刀の刃先は現在の炭素工具鋼の源流であり玉鋼(和鋼)と呼ばれる。商品分類としては玉鋼や高合金工具鋼については高級金属もしくは高級特殊鋼の代表例としてあげられるが、現在の炭素工具鋼は低合金鋼具鋼の範疇に入る。
低合金工具鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼などの種類がある。工具鋼は室温状態であっても製造時と使用時の強度変化が最も大きな固体工業材料の部類である。この変化をもたらすのが、マルテンサイトという無拡散変態であり古来より伝わる日本刀の刃先の金属組織もこのマルテンサイト変態により成る。類似鉄鋼にマルエージング鋼があるが、様々な理由で主流とは成り得ていない。また、合金添加の種類が多いため、様々な合成が試みられており鉄鋼材料の先端技術分野でもある。高速度鋼具鋼は通称ハイスは特に過酷な切削工具に用いられ、超硬工具と使用量の双璧を成す。
一般的にハイスよりは耐摩耗性が高い超硬合金ではあるが常温強度の強度調整機能がないため、加工費用は莫大なものになり極小さな部材として使用される。また超硬合金はマルテンサイト変態を利用しない合金なので欠け易く工業的安定性を得ることが難しい。
以上のような強度調整機能の大きさと工業的安定性の両者を兼ね備えているため、広範囲な金型部位や工具に使われ重宝がられる。
[編集] 代表的な工具鋼
代表的な工具鋼について、JISの規格で表記する。
- SK3:炭素工具鋼および
- SKS3:合金工具鋼(低合金工具鋼) - 特性が中途半端なので治工具、金型等では使用量は減少傾向にある。
- SKD11:冷間金型用鋼(冷間ダイス鋼)
- SKD61:熱間金型用鋼(熱間ダイス鋼)
- SKH51:高速度工具鋼(ハイス鋼)
以上3鋼種系を高合金工具鋼ということがある。
[編集] 参考資料
- 日立金属工具鋼技術情報