完備情報
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
完備情報(かんびじょうほう、complete information)とは、 経済学やゲーム理論において経済やゲームの 他の市場参加者やプレイヤーに関する情報が全参加者に知られている状況を記述する用語である。
完備情報は効率的な完全競争市場が成立するための理論上の前提条件である。 ある意味では市場参加者が合理的に行動するという経済理論の仮定の要求でもある。 もしもゲームが完備情報でなければ、個々のプレイヤーの行動が他のプレイヤーに及ぼす影響を予測できなくなる。 (たとえプレイヤーが他のプレイヤーが合理的に行動すると仮定したとしても。)
目次 |
[編集] 完備情報と完全情報
類似した概念に、完全情報 (perfect information) があるが同じではない。 完備情報はゲームの構造に関する知識の状態を表現するが、ゲームの内部に関する知識を持っているとは限らない。 たとえば、囚人のジレンマに関してあなたは完全な情報を持っているかも知れないが、 囚人のジレンマは不完全情報ゲームである。もう一人のプレイヤーの行動を知らないからである。 それにもかかわらず、どんな不完備情報ゲームも不完全情報ゲームに書き換えられる。 「偶然さん」 (Nature) をプレイヤーに含め、結果を偶然の行う未知の行動に条件づければよい。
不完備だが完全情報であるゲームの例示は難しい。 あなたが将棋の対局をし、ある事象(たとえば特定の駒の配置)がおこれば敵方に少なからぬ金額が支払われるとしよう。あなたはどの事象が対象であるか知らないものとする。 この場合、あなたは完全情報を持っている。敵方のすべての手を知っているからである。 しかしながら、敵方の報酬関数をあなたは知らないので、これは不完備情報ゲームである。
[編集] 確実情報
ゲーム理論書の幾人かの著者によって、完備情報と確実情報(certain information)の違いも区別されている。 この文脈では、完備情報はすべてのプレイヤーが他のプレイヤーのタイプ(性格または性向)を知っているようなゲームのことである。ゆえに他プレイヤーの報酬と戦略空間を知っている。 確実情報は、他のプレイヤーが用いる戦略を与えられて、自分がとる戦略がどのような報酬をもたらすかを知ることができるゲームのことである。 区別のための同値な方法は、特に展開型ゲームの場合役立つのは、不完備情報ゲームを「偶然さん」が最初に行動するゲームと定義し、不確実情報ゲームは「偶然さん」は他のプレイヤーが動いた後に行動するとするものである。
[編集] 内部リンク
[編集] 翻訳元
本記事はウィキペディア英語版
- Complete information. Wikipedia: Free Encyclopedia (English version) [1] as of 20:44, 27 September 2007
からの抄訳である。
[編集] 引用元
以下は英語版の引用元である。
- Fudenberg, D. and Tirole, J. (1993) Game Theory. MIT Press. (see Chapter 6, sect 1)
- Gibbons, R. (1992) A primer in game theory. Harvester-Wheatsheaf. (see Chapter 3)
ゲーム理論のトピックス | |
定義 | 協力ゲーム - 非協力ゲーム |
均衡 | ナッシュ均衡 - 部分ゲーム完全均衡 - ベイジアン・ナッシュ均衡 - 逐次均衡 - 完全均衡 - 合理化可能性 - 進化的に安定な戦略 - パレート効率性- 戦略的補完性 |
ゲームのクラス | 標準型ゲーム - 展開型ゲーム - 特性関数型ゲーム - 完全情報ゲーム - 不完全情報 - 繰り返しゲーム - ゼロ和 - 非ゼロ和 - 二人零和有限確定完全情報ゲーム |
ゲーム | 囚人のジレンマ - チキンゲーム - スタグハントゲーム |
理論 | ミニマックス法 - フォーク定理 - コアの極限定理 |
関連項目 | 数学 - 経済学 - 進化論 - 集団遺伝学 - オペレーションズリサーチ - 社会生物学- 環境社会学 |