学生街
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学生街(がくせいがい)とは、学校(主に大学)の周辺などに形成される学生の消費行動や生活と密接な街をいい、都市内の市街地の一地区である場合に用いる。
都市の中心部から市街地の連担がなく、孤立性が高いと「大学町」、都市の主産業が研究所や研究施設に関係する場合は「学術都市」、学術都市に商業機能が備わってくると「学園都市」などと呼ばれる。
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[編集] 概要
専門書店、古書店、飲食店、喫茶店、賃貸住宅、映画館、不動産屋など学生の勉学、衣・食・住、娯楽の提供に特化した店舗、施設が集中し、食事・遊びともに安価に供給されている。学生独自の文化がにじみ出ている味わいのある街が多く、卒業してからも住み着いたり、また通学に不便なのに雰囲気に惹かれて住む人もいる。この雰囲気などが歌としても歌われ『学生街の喫茶店』などのヒット曲も存在する。また、学生演劇の拠点又は延長として、小劇場の多くは学生街において展開され、日本におけるオフ・オフ・ブロードウェイ的な役割を担っているといえる。
大学は学生の教育の場であるだけでなく学術研究の場でもあるため、学会や研究会が頻繁に開催され外部から大学院生や研究者たちが訪れる。そのため、大学周辺の町には来訪する研究者向けの安価なビジネスホテルも集中する傾向がある。普段は学生で賑わう安価な飲食店は、同時に研究者同士の親睦の場としても使われる。研究に必要な機器などを受注する業者が学生街内やその近辺にあることも多い。
学生街が必ずしも大学所在地周辺に形成されるとは限らず、学生寮の周辺であったり、大学へ行く途中のターミナル駅(繁華街)であったり、アパートの賃料が安価な地域であったりということもありうる。ただし、全ての大学の周辺地域が学生街になるわけではない。授業が終わると学生たちがよその繁華街に出掛けてしまって大学周辺地域との関わりが少ないという場合、その大学周辺は学生街へと発展していかないケースに見舞われる。また、学生街のある大学においても学舎の移転が起こった場合、学生街までもが移転先へと付随していくわけではなく、新たな学生街の形成と成熟に非常に時間がかかり難しいものとなる(あるいは発展していかないというケースも)。そうなった場合、以前に比べ学生たちの生活や外来研究者たちの滞在に不都合が生じやすくなる(後述の#今後の動向”の項目も参照)。
[編集] 主な学生街
[編集] 北海道
- 札幌駅北口・北12条駅・北18条駅周辺及び北大ななめ通り(札幌市北区)
- 北海道大学、藤女子大学、北海道武蔵女子短期大学。予備校が複数ある。
- 大麻・大麻駅周辺(江別市)
- 高校、大学、専門学校や学生アパートが周辺に複数あるため、比較的小規模であるが、学生街がある。
[編集] 宮城
- 本町・東四番丁通り・クリスロード(仙台市青葉区)
- この近辺に多数存在する専門学校と予備校の学生街。東京の代々木のような街。
- 一番町南端・柳町通り(仙台市青葉区)
- 以前は東北大学片平キャンパスの学生街として栄えたが、教養部が片平から川内キャンパスに移ったため衰退している。
[編集] 福島
[編集] 群馬県
[編集] 千葉
[編集] 埼玉
- 高坂駅周辺(東松山市)
- 大東文化大学、東京電機大学、山村学園短期大学。学生向け飲食店やアパートが多い。
- 松原団地(草加市)
- 獨協大学。
- 朝霞
- 東洋大学、学生向けの飲み屋や古書店などが多く進出している。
- 志木駅
- 立教大学、慶應義塾志木高等学校や立教新座高等学校もあり、カラオケ店などが多く存在している。
[編集] 東京
- 神田駿河台地区
- 日本国内で最も大学が集中している地区である。大きくは以下のような3つの地域に分かれているが、明治時代に千代田区神田駿河台へ学問所が集積した名残から「神田駿河台学生街」と呼ぶことが多い。この地区には「日本のカルチェラタン」という別名もある。かつては中央大学も存在していた。一方で、大学の医学部や付属病院、および一般の市中病院が多く立地しており、医療地区でもある(このような山の手の医療集中地区を、英語ではPill Hillという)。学生向けからスタートした楽器店やスポーツ用品店も多い。
- 高田馬場・早稲田
- 早稲田大学。
- 目白
- 学習院大学・日本女子大学。
- 下北沢
- 東京大学教養学部(駒場)、明治大学(和泉)。小劇場、ライブハウスの多いサブカルチャーの発信地である。
- 池袋
- 立教大学と東京音楽大学を中心に東武東上線沿線の東洋大学、最寄り駅が学生街となっていないお茶の水女子大学・大正大学・拓殖大学の学生が多く集まる。
- 本郷
- 東京大学。
- 渋谷
- 東京大学教養学部(駒場)、青山学院大学、國學院大學。
- 三田
- 慶應義塾大学。
- 白山
- 東洋大学が代表的だが日本医科大学もここに所在している。
- 和泉(明大前)
- 明治大学。
- 江古田
- 日本大学芸術学部、武蔵大学、武蔵野音楽大学。
- 国立
- 一橋大学。
- 八王子
- 中央大学、首都大学東京をはじめとして、八王子は数多くの大学を擁する国内最大規模の学園都市であり、市内中心部の八王子駅周辺や、各大学の所在地周辺に学生街が散在している。
[編集] 神奈川
- 日吉
- 慶應義塾大学。
- 六角橋・白楽
- 神奈川大学。
- 向ヶ丘遊園・生田(川崎市多摩区)
- 専修大学、明治大学。
- 厚木
- 橋本
- 多摩美術大学。また、法政大学多摩キャンパスなど最寄駅が栄えていない大学の学生が近隣のこの駅に集まる。
- 淵野辺
- 青山学院大学、桜美林大学、麻布大学。青山学院大学の進出で一気に学生向け店舗が増えて学生街の仲間入りを果たした。
[編集] 愛知
- 本山駅(名古屋市千種区)
- 愛知学院大学歯学部・薬学部・短期大学部、愛知工業大学・大学院。
- 名古屋大学駅(名古屋市千種区)
- 名古屋大学。
- いりなか駅・八事日赤駅(名古屋市昭和区)
- 南山大学。
- 八事駅(名古屋市昭和区)
- 中京大学、名城大学薬学部。
- 塩釜口駅(名古屋市天白区)
- 名城大学。
以上の地区は近接しており、一体となって一大学生街を形成していると考えることもできる。
[編集] 滋賀
[編集] 京都
- 吉田・百万遍(京都市左京区)
- 京都大学。
- 北大路バスターミナル周辺(京都市北区)
- 京都府立大学。
- 烏丸今出川・河原町今出川(京都市上京区)
- 同志社大学、京都府立医科大学。
- 北野白梅町界隈(京都市北区)
- 立命館大学、佛教大学。
- 深草・藤森(京都市伏見区)
- 龍谷大学、京都教育大学。
[編集] 大阪
- JR阪和線杉本町駅(大阪市住吉区)
- 大阪市立大学
- 阪急関大前駅(吹田市)
- 関西大学千里山キャンパス。
- 近鉄大阪線長瀬駅・同奈良線河内小阪駅・八戸ノ里駅近辺(東大阪市)
- 近畿大学、大阪商業大学。
- 近鉄長野線喜志駅周辺(富田林市)
- 大阪芸術大学。大学の所在地は隣の南河内郡河南町。
[編集] 兵庫
- 伊川谷・学園都市界隈
- 神戸学院大学、兵庫県立大学、神戸市外国語大学、流通科学大学
- 六甲・六甲道界隈
- 神戸大学、神戸松蔭女子学院大学
- 岡本・甲南山手・摂津本山界隈
- 甲南大学、甲南女子大学、神戸薬科大学
- 西宮北口・夙川・甲東園界隈
- 関西学院大学、神戸女学院大学、大手前大学
[編集] 岡山
- 岡山市津島エリア
- 岡山大学本校津島キャンパス、岡山商科大学、岡山理科大学、ノートルダム清心女子大学。
- 倉敷市新倉敷エリア
- 倉敷芸術科学大学、くらしき作陽大学。
- 中庄(倉敷市)
- 川崎医科大学、川崎医療福祉大学、川崎医療短期大学。
[編集] 広島
- 広島市佐伯区五日市エリア
- 広島工業大学、鈴峯女子短期大学。
- 広島市南区霞・宇品エリア
- 広島大学霞キャンパス(医学部・付属病院)、県立広島大学(本部・広島キャンパス)。
- 広島市安佐南区沼田エリア
- 広島修道大学、広島市立大学、広島工業大学沼田キャンパス。
- 下見(東広島市)
- 広島大学本部。
[編集] 香川
[編集] 福岡
- 折尾(北九州市八幡西区の折尾駅周辺)
- 折尾駅から北へ、九州共立大学、産業医科大学にかけて、また西口から南へ折尾愛真学園にかけて学生街ができている
- 箱崎(福岡市東区)、六本松(福岡市中央区)
- 九州大学。
- 西新(福岡市早良区)
- 西南学院大学。
- 七隈(福岡市城南区)
- 福岡大学。
[編集] 熊本
[編集] 鹿児島
[編集] 世界の有名な学生街
[編集] イギリス
[編集] フランス
- カルチエ・ラタン « Quartier latin »
- パリ大学(ソルボンヌ)。Quartier latinとは「ラテン語がよく喋られる町の一角」という意味。直訳は「ラテン語区」。かつての西欧では学問はラテン語で行われるのが基本だった。
[編集] アメリカ
- ケンブリッジ (マサチューセッツ州)
- ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、ケンブリッジ・カレッジ、レスリー大学、ロンギー音楽大学。
[編集] 中国
[編集] 韓国
なお、韓国ソウルの新村にある梨花女子大学校前(イデ・アプ)は学生街でありながら韓国の流行の最先端を行くファッション・タウンとなっている。
[編集] 学生街で特に多く見られる業態
- 学業関連
- 住居、衣料
- 不動産屋
- 下宿屋
- カジュアルファッションを主とした衣料品店
- 食事
- 余暇
[編集] 学生街の調査より 学生街の実状と暫定的な学生街の条件
飲食店に大きなニーズがあり、日常生活用品店やその他にも意外に多様な商店も多く見られる。ついで娯楽施設が多い。 学生街の条件としては
- 学生の日常生活に必要な物が手に入る。
- 大変活気がある。
- 確実に学生が店を利用する。
- 店に学生のための様々な工夫が見られる。
- 学校が近くにある。
[編集] 学生街の調査より 学生街の形成
学生街は自然発生的ではなく、学校、学生、商店、企業、インフラといった条件をベースに学生独自の文化と街自体の経済力によって成る。よって学生街を創出するにはある程度、学校、地元、支援者、商店街といった中心者が意図的に学生街のベースとなるインフラを整備しなければならない。通学・帰宅には学生は最短ルートを通り、少し外れた所に興味のある店があっても足を延ばす率は格段に減る。また通学路が分散しないように留意しなければ学生街の形成はならない。
[編集] 今後の動向
1980年代から1990年代にかけ、手狭になった都心のキャンパスから広大な敷地が入手できる郊外へ大学が移転する動きがあったが、学生生活の不便さへの敬遠や、地方出身者の都会生活に対する憧れなどから優秀な学生を集めにくくなってしまうという弊害が生まれた。例えば中央大学は御茶ノ水から八王子へ移転したことによって優秀な学生が集まりにくくなり、それまでトップだった司法試験の合格者数が減ってしまったとも言われている。
このため、明治大学や法政大学といった一部の大学は、元の本拠地である都心部に高層校舎を建て、あくまでも都心部に留まる方針を打ち出した。
さらに、1959年から施行されていた工場等制限法が2002年に撤廃され、都心部でも大学の教室が新設できるようになった。大学全入時代に備え、より通いやすい(より多くの入学者を獲得できる)都心回帰の動きが加速し、縮小していた学生街が活発になる可能性が出てくると予想される。例えば、東洋大学は文京区白山のキャンパス隣接地にたまたままとまった土地の売却があったことから購入、それと前後して同校地の再開発を行い、2002年の法律廃止とともに取得した更地へ新校舎を建設した。そして、それまで朝霞キャンパス(埼玉県朝霞市)に通っていた文系学部の1・2年生も全て都心部へ統合し、広告でも4年間都心へ通えることをアピールしている。白山は東洋大学の朝霞進出とともに学生街としての役割を縮小させていたが、学生向けの店舗が新しくできるなど、再び学生街として活発になりつつある。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 新たな「学生街」への展望半田章二