太陽熱温水器
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太陽熱温水器(たいようねつおんすいき)とは、太陽熱により水を暖める機器である。受光した太陽光エネルギーの50%以上を熱として利用することが可能な、太陽エネルギーの利用技術の一種である。エネルギー変換効率が高く、費用対効果が高く、耐久性等は高水準にある[1]。
狭義には、建物の屋根の上に貯湯槽と共に設置し、集熱器により太陽熱を集める自然循環式のものを指す[1]が、貯湯槽と集熱器が分離したもの(ソーラーシステム)をも対象として用いられることもある。この項では、特に断りの無い限り、両者について記述する。
目次 |
[編集] 概要
太陽熱温水器は蓄熱式の太陽エネルギー利用技術の一種である。再生可能エネルギーに分類され、温暖化ガスの排出量削減に貢献するエネルギー源である[2]。また昼間から夕方にかけてのエネルギー需要のピークを緩和する効果もある。新エネルギーの1種にも指定され、各種の補助金や融資優遇制度などの推進策が取られている。
[編集] 主な形式
[編集] 一体型(太陽熱温水器)
自然循環型とも呼ばれる。集熱器(ソーラーパネル)と貯湯槽が一体型している。水は対流により自然に循環させる。構造的に簡単で価格が安く、よく普及している。重い水の入った集熱器により屋根に負担かかる、寒冷地では水が凍結し太陽熱温水器を傷める可能性があるといった欠点がある。
[編集] 分離型(ソーラーシステム)
屋根上の集熱器と、地上の貯湯槽に分離している形式のシステムである。ポンプにより集熱器と蓄熱槽の間で水や不凍液を強制循環させる。屋根の負担が自然循環タイプより軽いなどの長所を持つ。ポンプを運転する電気が必要なこと、価格がやや高くなることが欠点。 大きく分けて、水を循環させるタイプと不凍液を循環させるタイプがある。
- 水を循環させるタイプ
- 水は強制循環しているので凍結しにくい。
- 不凍液を循環させるタイプ
- 水でなく不凍液を入れる。実際に利用する水が屋根上まで行かないため、その分衛生面での心配が少ない。
- ポンプにより集熱器と蓄熱槽の間で不凍液を強制循環させる。蓄熱槽内では、不凍液と水との間で熱交換が行われる。集熱器による屋根の負担が軽く、凍結の心配はない。構造的にやや複雑で価格が高いことが欠点。
[編集] ソーラーヒートポンプ
太陽熱温水器でつくられる温水をそのまま利用するのではなく、温水を利用して冷媒を強制的に循環させることで、給湯・暖房・冷房の機能と性能を有するタイプ。高効率だが設置コストが高く、住宅用太陽熱高度利用システム補助制度がある。
[編集] 集熱器の形式
太陽熱利用機器の集熱器部分には大きく分けて平板型集熱器、真空管型集熱器、集光型集熱器の3種類がある。このうち一般家庭用のシステムには、太陽を追尾しなくても良い平板型と真空管型が多く用いられる。
[編集] 平板型集熱器
最も単純な形式の集熱器である。平板型・黒色の集熱面に直接熱媒(水や不凍液)を接触させる。集熱面裏側は断熱材で断熱する。構造が簡便でコストを下げやすい。集光側においてカバーガラスと集熱部との間の対流損失が大きく、100℃以上の高温を得るのは難しい。自然循環式と強制対流式の両方がある。
[編集] 真空管型集熱器
内部を真空にしたガラス管の中に熱媒を通す管と集熱板を設けた構造を多数並べるものである。カバーガラスとの間の対流による損失がなく、高効率で集熱することができる。熱媒は強制循環させる。内部の真空を長期に亘って維持する必要があるため、高度な製造技術を要する。平板型に比較して一般に高性能、高価である。
[編集] 太陽光発電との複合
太陽光発電モジュールと一体化して、発電と集熱を同時に行うタイプの製品(光・熱複合ソーラーシステム)も存在する[例]。強制循環用ポンプの電源を自己調達でき、太陽光エネルギーの総合的な利用効率も上げられる利点があるが、製造に高度な技術を要し、高価になりやすい。
[編集] 選択吸収膜、選択反射膜
太陽光の赤外線エネルギーの吸収効率を上げるために特定の波長での吸収を高めた皮膜が施される。また、黒体放射による熱の損失を防ぐため、集熱管の周りを真空にしたガラス管で覆い、ガラス管の内面をより長波長の赤外線を反射する皮膜をコーティングする。[2][3][4]
[編集] 特許
パッシブソーラー(空気集熱式)の「OMソーラー」は基本特許が切れ、オープン化された。
[編集] 関連事項
[編集] 参考文献
- 「太陽エネルギー利用技術」、日本太陽エネルギー学会編、オーム社、2006年、ISBN 4-274-20278-X
- 「ソーラーエネルギー利用技術」 森北出版 2004年 ISBN 978-4-627-94661-3
[編集] 脚注
- ^ 太陽熱利用・資源エネルギー庁
- ^ http://tec-e.net/commodity/commodity01.html
- ^ http://www.mech.tohoku.ac.jp/mech-labs/yugami/research/solar_abs/solar_abs_info.html
- ^ http://www.morikita.co.jp/mkj/94661.html