ペトログリフ
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ペトログリフ(Petroglyph) とは、象徴となる岩石や洞窟内部の壁面に、意匠、文字が刻まれた彫刻のこと。ギリシア語で石を意味するペトロとグラフ(彫刻)の造語である。日本語では通常岩絵と呼ばれる。線刻(画・文字)と呼ばれたり、岩面彫刻、岩石線画、岩面陰刻と訳されることもある。
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[編集] 概要
人類が後生に伝えたいさまざまな意匠や文字を岩石に刻んだもの。筆記具や紙を持たない古代の人々が残した記録として注目されがちであるが、アメリカ合衆国ハワイ州などには16世紀や17世紀にかけて刻まれた比較的新しいものもある。また、近世や現代においても、宗教儀式の目的やアートとして刻まれるものも多数存在している。
[編集] 意義
過去の人々の風俗や生活様式、時には気候などを類推する上で、貴重な手がかりとなることから、考古学的に重要視される。また、一部には美術的な価値も見いだされる場合もある。
[編集] 有効性
岩石の風化により生じる単純な亀裂やくぼみを誇大解釈したり、時には加工や偽造すら加えて存在価値を主張する者も見受けられる。また、こうしたものが世代を超えて再発見され、誤った評価を受ける例もあり、資料としての有効性を難しくすることもある。
[編集] 主な遺跡
[編集] 日本のペトログリフ
環太平洋地域にペトログリフの文化が点在することから、日本にも存在するものと推測されてきた。これに呼応するように、日本国内でもペトログリフの史跡が多数名乗りを上げるようになり、玉石混淆の状態となっている。 しかし、日本国内のペトログリフの研究については、偽書とされる神代文字の一種や他地域の言語などと関連付けるなど、論理が破綻したり偶然を根拠にした類推が多いこと、また、屋外に自然状態(野ざらし)で存在しているものが多く、繊細な線刻が日本の過酷な自然環境下で1,500年以上も原型を留めているか否かに議論を挟む余地もある。こうした事情により、正当な評価が進んでいないのが現状である。