プロヒューモ事件
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プロヒューモ事件(プロフューモじけん、Profumo Affair)は、イギリスのマクミラン保守党政権時の陸相であったジョン・プロヒューモが、ソ連側のスパイとも親交があった高級娼婦に国家機密を漏らしたと疑われた事件である。同政権の崩壊につながり、「20世紀最大の英政界スキャンダル」とされる。
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[編集] 事件の概要
1962年12月に発生した、高級娼婦クリスティーン・キーラーと関係のある2人の男性の銃撃事件を調査した報道機関が、キーラーはプロヒューモ陸相と、イギリス駐在ソ連大使館付海軍武官エフゲニー・イワノフ大佐とも親密な関係があるという情報を入手。しかし、「政治家のプライバシーを尊重する」というイギリスの伝統のため、当初事件は大きく扱われなかった。
1963年3月21日、英下院で労働党議員ジョージ・ウィッグが「ある傷害事件の証人として出廷を命じられたキーラーと、閣僚の1人が関係があり、国家の安全のために事件を追究すべし」とし、噂の真相究明を要求した。疑いをもたれたプロヒューモは、「その女性は知っているが、不品行な関係はない」と下院で身の潔白を主張した。その後、キーラーがイワノフ大佐とも関係があったことが明らかになり、国家の軍事機密漏洩事件にまで発展。英国の報道機関もこぞってこの事件の詳細を報道、国内の大きな関心事となった。
このためプロヒューモは、ハロルド・マクミラン首相宛の手紙の中で、議会での発言が嘘であり、キーラーと親密な関係については認めたが、軍事機密の情報漏洩についてはなかったと告白、謝罪して6月5日に辞任した。告白前、プロヒューモは女優であった妻のヴァレリー・ホブソンに事件の事実を話したが、妻はスキャンダルの渦中でも夫の言い分を支持していた。プロヒューモは「保守党の輝かしい星」ともいわれた政治生命を、恥辱のうちに自ら葬り去った。
この「世紀のスキャンダル」にイギリス議会は混乱し、マクミランの責任問題にまで発展。マクミランは、3月17日の下院における内閣不信任案は切り抜けたものの、11月には健康上の理由で辞意を表明、1964年の総選挙では同党は、労働党に敗北した。
[編集] 映画化
プロヒューモ事件は、1989年に「スキャンダル(Scandal)」の題名で、イギリスで映画化されている。
- 監督:マイケル・ケイトン・ジョーンズ(Michael Caton-Jones)
- 製作:スティーヴン・ウーリー(Stephen Woolley)
- 製作総指揮 ニック・パウエル(Nik Powell)、ジョイ・ボイド(Joe Boyd)
- 脚本:マイケル・トーマス(Michael Thomas)
- 撮影:マイク・モロイ(Mike Molloy)
- 音楽:カール・デイヴィス(Carl Davis)
- 編集:アンガス・ニュートン(Angus Newton)
- 日本版字幕 松浦美奈
[編集] キャスト
- ジョン・ハート(John Hurt)-スティーブン・ワード博士役
- ジョアン・ウォーリー・キルマー(Joanne Whalley-Kilmer)-クリスティーン・キーラー役
- ブリジット・フォンダ(Bridget Fonda)-マンデイ・ライス・デイヴィス役
- イアン・マッケラン(Ian McKellen)-ジョン・プロヒューモ役
- レスリー・フィリップス(Leslie Philips)
- ブリット・エクランド(Britt Ekland)
- ダニエル・マッセイ(Daniel Massey)
- ジェローン・クラッベ(Jeroen Krabbe)-エフゲニー・イワノフ役
- ローランド・ギフト(Roland Gift)