プラスマイナス記号
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プラスマイナス記号 (±) は近似値の精度を示すためや、符号のみが異なる2つの値を略記する簡便な記法として、広く使われる数学記号である。
数学ではこの記号は「プラスマイナス」(英: plus or minus) と読み、片方が正で片方が負のちょうど2つの答えが考えられることを示す。また後述の#マイナスプラス記号と合わせて複号とも呼ばれる。
しかしほとんどの実験科学では、この記号は「増減がある」(英: give or take) と読み、測定値が取りうる上限から下限までの範囲を示す。
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[編集] 精度を示す用法
± で近似値を表す用法が最もよくみられるのは、量の数値をその公差やその統計的誤差の範囲と組み合わせて表すときである。 たとえば、「5.7 ± 0.2」は5.7から0.2単位内にあると規定もしくは推定される量を示す。5.7 − 0.2 から 5.7 + 0.2 までの範囲内のあらゆる値がありうる。より厳密には、科学的な使用ではその間隔内に存在する確率が、通常2標準偏差 (95.4%) の確率となる。
百分率を使って許容誤差を示す用法もある。たとえば、230 V ± 10% は電圧が 230 V の両側 10% の範囲内 (207 V - 253 V) にあることを指す。
[編集] 符号が反対の2つの値の略記法としての用法
± には、数学の方程式で、たとえば1つの公式で2つの等式を表すための略記法としての用法が見られることがある。もっとも有名な例に二次方程式の解の公式がある:
もし ならば、
省略せずに書くと、これは方程式に2つの解があると述べている。すなわち
および
他の例が三角恒等式にみられる。
これは2つの等式を略したものである。1つは等式の両側を + にしたものであり、1つは両側を − にしたものである。
正弦関数のテイラー展開の公式では、この表現のやや異なった用法が見られる:
これはやや濫用ぎみの記法だが、(0から数えて) 偶数番目の の項は加算されるが、奇数番目の項は減算されるというように項の符号が交互に現れることを示している。この場合、量 ( − 1)n (n が偶数のときは + 1 を、n が奇数のときは − 1 を与える) を使えば、より曖昧さの少ない表現になる。
[編集] マイナスプラス記号
さらにもう1つマイナスプラス記号 (∓) という文字もまれにみられる。「±」記号と組み合わせて使うと大きな意味を持つ場合にのみ採用される。「±」と一緒に「x ± y ∓ z」のような式中で使うことができる。これは「x + y − z」や「x − y + z」とは解釈できるが、「x + y + z」とも「x − y − z」とも解釈できない。「∓」の上半分の「−」を採るときは「±」でも上半分の「+」のほうを採る (下半分の記号も同様) とみなし、そのことを複号同順と言う。この場合、もとの式を「x ± (y − z)」のように書き換えれば混乱を避けられるが、
のような三角恒等式の場合は「∓」記号を使って書いたほうがずっと読みやすくなる。
[編集] 文字コード
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
---|---|---|---|---|
± | U+00B1 | 1-1-62 | ± | 正又は負符号 |
∓ | U+2213 | 1-3-59 | ∓ | 負又は正符号 |
- JIS X 0208、JIS X 0213には、プラスマイナス記号が1面1区62点に存在する。また、JIS X 0213には、マイナスプラス記号が1面3区59点に存在する。
- ISO/IEC 8859-1、7、8、9、13、15、16では、プラスマイナス記号がコードB1hexに存在する。
- Unicodeの先頭256個のコードポイントはU+00B1 にも存在する。
- この記号には
±
というHTML実体表現も存在する。 - 使用頻度の低いマイナスプラス記号 (∓) は、名前付きHTML実体は持たないが、Unicodeではコードポイント U+2213 で利用可能であり、HTMLでも
∓
で利用可能である。 - TeXではプラスマイナスとマイナスプラス記号はそれぞれ
\pm
と\mp
のような実体として符号化される。