バカラオ
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バカラオ(西:Bacalao、葡:Bacalhau バカリャウ、伊: Baccalà バッカラ)は、タラ(鱈)の塩漬けの干物、またはそれを用いた料理を指す。南ヨーロッパ諸国、スペインやポルトガルの植民地であった中南米諸国、そしてタラの捕獲地である北欧諸国を中心に食べられている。
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[編集] 概要
スペイン語圏において、食材のバカラオ(タラ)は生のこともあるが、通常はバカラオ・エン・サラソン(Bacalao en salazón 、塩漬け干ダラ)を意味する。
塩漬けにして乾燥した場所で数ヶ月保存する。一匹丸ごと保存加工されたタラの塊はバカラダ(bacalada)と呼ばれ、ほぼ三角形の形をしている。バカラオはスペインだけでなく、ノルウェー(no:Klippfisk 、クリップフィスク)やポルトガル(バカリャウ)など世界各地で食されている。
同じく塩蔵されるタラ科ポラキアス属の魚(en:Pollock 、ポラック)とよく混乱されるが、バカラオはタラ科マダラ属の魚(en:Cod 、コッド)を用いる。 また北欧諸国のルーテフィスク(no:Lutefisk) は乾燥させた鱈を苛性アルカリ液で柔らかくゼリー状にしたもので、塩蔵はしていないため、バカラオとは異なる。
[編集] 加工
[編集] 塩漬け(保存)
この方法で保存すると、ココチャス(kokotxas、喉肉)などの肉、卵、骨、肝臓、浮き袋など料理に使える多くの部分を取り除くことになる。塩漬けで数ヶ月乾燥させると三角形の平らな形となり、持ち運びが楽になるとともに、少ない量であれば重ねて積むこともできる。
[編集] 塩抜き(下ごしらえ)
塩蔵された魚は大量に塩が用いられているため、そのままで食べることはできない。調理の約24時間前から冷水で塩抜きする。塩抜きの途中で一度か二度水を変えるが、その頻度はタラの大きさによって異なる。塩抜きが完了したらすぐに調理を始めるべきである。
塩抜きの段階で薄くはがれた細切れの肉片は「バカラオの切れ端」(migas de bacalao 、ミガス・デ・バカラオ)として別売りされることがある。
[編集] カトリックの食習慣
バカラオは、スペイン・ポルトガル・イタリア・フランスおよび中南米諸国と係わりが深い。これらのカトリック文化圏では、謝肉祭の最終日(マルディグラ 、太った火曜日の意)の翌日である灰の水曜日から復活祭の前日までの40日間を四旬節といい、かつてはこの期間中に小斎として鳥獣の肉を絶つことになっていたため魚を食べた。20世紀後半以降は四旬節のうち、灰の水曜日とキリストが十字架にかかった聖金曜日のみ、あるいは受難と同じ曜日である毎週金曜日に鳥獣の肉を食べない習慣となっている。南欧や中南米では聖金曜日を含む四旬節の最後の一週間に当たるセマナ・サンタ(聖なる一週間 、es:Semana Santa)用の伝統食が確立されており、タラとくに塩漬けのバカラオはセマナ・サンタのシンボル的な食べ物となっている。
スペインにおいてタラはセマナ・サンタに食べる伝統的な魚であり、スープ、フライ、コロッケ、トルティージャなど様々な料理に用いられる。アルゼンチンでも肉食を避ける日はマグロを詰めたエンパナーダ(es:Empanada)とともにバカラオのシチューが代表的な食事となっている。バカラオが手に入らない場合はサメの肉(カソン、cazón)で代用する[1]。エクアドルではファネスカ(es:Fanesca)、コロンビアではファネスカ(Juanesca)というバカラオのスープを食べる習慣がある[2]。また、この時期 ブラジルでも、スカンジナビア諸国から大量のタラを輸入しており、その量は世界最大となっている[3]。近海の魚でなく敢えて遠方の寒流に棲むタラを食べるのは、宗教的な伝統食であることと、旧宗主国であるポルトガルの食生活の名残であるとされる。
メキシコは例外で、セマナ・サンタの時期ではなくクリスマス・イブに食べる。
[編集] アジアでの食用
ポルトガルの植民地であったマカオでもバカリャウ料理は一般的である。広東語にも借用語として入り、「馬介休 マーガーイヤウ ma5gaai3yau1」と呼ばれている。
[編集] バカラオを用いた料理
- スペイン :
- バカラオ・アル・ピル・ピル(es:Bacalao al pil pil) - ニンニクと唐辛子を入れたオリーブ煮。伝統的なバスク料理 。
- バカラオ・アル・アホアリエロ(es:Bacalao al ajoarriero) - ニンニクとトマトのソースであえたバカラオ。バスク料理。
- ポタヘ・デ・ビヒリア(es:Potaje de vigilia) - 四旬節の期間に食べるバカラオ入り野菜シチュー。
- アロス・ア・ラ・サモラナ(es:Arroz a la zamorana) - 米や野菜とパプリカなどの香辛料で煮込んだサモラ県の庶民的な郷土料理。
- イタリア :
- バッカラ・アラ・ヴィチェンティーナ(it:Baccalà alla vicentina) - バカラオのミルク煮。ヴィチェンツァ郷土料理。
- ポルトガル :
- バカリャウ・エスピチュアル(pt:Bacalhau Espiritual) - セマナ・サンタ中に食べるため、「聖なるバカラオ」という名前がつく、バカラオのグラタン風料理。
- バカリャウ・アサード・コン・バタタス・ア・モーロ(pt:Bacalhau assado com batatas a murro) - ローストしたバカラオに、焼いて中央をつぶしオリーブ油とニンニクを加えたポテトを添える。リバテホ(Ribatejo)地方の料理。
- バカリャウ・ア・ブラス(pt:Bacalhau à Brás) - バカラオ、タマネギ、ジャガイモの細切りを卵でとじたもの。定番ポルトガル料理。
- バカリャウ・ア・ゴメス・デ・サ(pt:Bacalhau à Gomes de Sá) - バカラオ、タマネギ、ジャガイモをオーブンで焼いたもの。ポルト市の名物料理。
- バカリャウ・ア・ミニョータ(pt: Bacalhau à minhota) - バカラオのパプリカ揚げ。フライドポテトやオニオンリングを添える。ミーニョ(Minho)地方の料理。
- メキシコ :
- マカオ
- 馬介休球 - バカリャウの丸いコロッケ風。
- 馬介休炒飯 - ほぐしたバカリャウ入りの炒飯。マカオではミナミコノシロなどの地元の魚の塩漬けもよく作られていて、炒飯の具としても用いられるが、バカリャウを使うことも行われている。
[編集] 脚注
- ^ es:Gastronomía de Semana Santa Wikipedia スペイン語版 2007年8月23日17:14UTC版
- ^ es:Fanesca Wikipedia スペイン語版 2007年9月25日21:42UTC版
- ^ サンパウロ ニッケイ新聞 2007年3月30日『復活祭控えタラ販売に拍車=輸入量はダントツの世界一』
- ^ El Restaurante Mexicano: Celebrate the holiday season Latin-style(英文)
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- Clover, Charles (2004). The End of the Line: How Overfishing Is Changing the World and What We Eat. London: Ebury Press. ISBN 0-09-189780-7. (英文)
- Davidson, Alan (1979). North Atlantic Seafood. ISBN 0-670-51524-8 (英文).
- Kurlansky, Mark (1997). Cod: A Biography of the Fish That Changed the World. New York: Walker. ISBN 0-8027-1326-2. (英文)