ナビゲーター (モータースポーツ)
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ナビゲーターとは、ラリー競技においてドライバーと共に車両に乗り込み、走行の手助けをする選手である。 コ・ドライバー(co-driver)とも呼ばれる。
この「二人乗り」で戦う点が、ラリー競技の最大の特徴でもある。
「ナビ」「コ・ドラ」などと略される。
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[編集] 概要
競技のルール上は、ナビとドライバーは全く平等な選手として扱われており、ライセンスや装備品などの規定もドライバーと同様である。競技の途中でドライバーと役割を入れ替わってもルール的には全く問題ない。 ただし、肢体に不自由があるなどドライバーに適さない者もナビであれば特例で出場できる場合がある。
しかし世間での扱いは完全にドライバーの「添え物」扱いであり、非常に地味である。世界ラリー選手権(WRC)の車両には、リアのサイドウインドウに選手の名前が貼ってあるが、2004年シーズンからこれがドライバーのみの名前で良くなった。ワークス選手の給料も、ドライバーに2人分がまとめて渡され、そこからもらうケースが多い。
志す者がドライバーよりも少ない事は自明であり、個人レベルではもちろんの事、ときにはワークスドライバーでも自分の条件に合うナビゲーター探しには苦労する事がある。 経験が豊富で特定のドライバーに付いていないナビは、シーズンごとにあちこちから競技への誘いの声が掛かる。
ラリー自体が経験が要求される競技であり、ナビはドライバーをコントロールする立場である関係上、ドライバー以上に経験が必要と言われ、年齢層が高い傾向があるが、性質上女性や競技経験の浅い者が乗ることも多く、個人レベルではこの傾向が顕著である。
[編集] ナビゲーターの役割
基本的に、ドライバーは「走る事」だけを行い、ナビがその他の役割を全て行うと言っても過言ではない。 また、物理的・精神的両面でドライバーを走る事だけに集中させられるようにするのもナビの役目の一つである。
- 指示速度の算出
- 詳しくは当該項目を参照。自車が、主催者側から指示された速度どおりに走れているかを逐次チェックする。ただし近年は計算ラリーの開催数減少に伴い、地方によっては全く行なった事がない者も存在する。
- 道案内
- リエゾン区間において、主催者側から発行されたラリー用の地図(コマ図)の通りに走るよう、曲がり角などをドライバーに指示する。
- ペースノート作成
- レッキ(前日または当日朝に行われる、スペシャルステージの下見)にて、スペシャルステージのコース情報をノートに控える。このノートを「ペースノート」と言う。書いてある内容はカーブのきつさ、直線の距離、走行時の注意事項などである。
- ノート読み
- スペシャルステージにおいて、ペースノートに基づき、ドライバーにコースを指示する。
- トラブル対応
- コースアウト等をして、それ以上走行できなくなった時は、後続車に対して救護等の要・不要を示さなければならない。ドライバーと共にパンクしたタイヤを交換したり、自走不能な車両を押していったりする姿も良く見られる。不幸にもリタイアとなってしまった際には後の処理などを行う。
- タイム確認
- 自分及び他の選手のタイムを確認し、自分の大体の順位を確認する。
- 競技進捗の確認
- 競技直前や競技中に主催者から出される公式通知を確認し、競技の進行やルールに変更がないかどうかを確認する。
- タイムキーパー
- サービスなどの残り時間を確認し、作業の進行やドライバーの準備を促す。
- 事務作業
- 競技の申込みなどをナビが行う場合が多い。
[編集] 著名なナビゲーター
- ファブリッツァ・ポンス
- ニッキー・グリスト
- ルイス・モヤ
- カルロス・サインツのナビ。ペースノートを早口で読み上げることで有名。
- ティモ・ラウティアイネン
- マーカス・グロンホルムのナビ。グロンホルムの義弟(ラウティアイネンの方が年上だが、グロンホルムの妹と結婚したため。)。
- フィル・ミルズ
- ペター・ソルベルグのナビ。
- ダニエル・エレナ
- セバスティアン・ローブのナビ。WRC史上最多勝のナビ。
- エルベ・パニッツィ
- ジル・パニッツィのナビ。ジルの実弟。2006年シーズン途中に引退。
- マイケル・パーク
- マルコ・マルティンのナビ。2005年シーズン、グレートブリテンのSS15での事故で死亡。
- ジャン・トッド
- デビッド・リチャーズ
- 現役時代はアリ・バタネンのナビとして有名。引退後レーシングカーコンストラクターのプロドライブを設立し、WRCに参戦するスバル・インプレッサのチーム監督等を務めている。