ソーダ回収ボイラー
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ソーダ回収ボイラーとは、製紙工場特有のボイラーでパルプ製造工程で排出される廃液(黒液)を燃料とするボイラーである。単に回収ボイラーとか黒液回収ボイラーとも言われる。近年はバイオマスエネルギーとして注目を浴びている。
[編集] 概要
- ボイラー本体についてはボイラーを参照。
パルプ製造法で大半を占めるクラフトパルプ製造工程において原料となる木材(チップ)に薬品(白液:苛性ソーダ等)を加え、蒸解釜を用いて高温高圧下で蒸煮し繊維をとり出し、繊維分はパルプとして洗浄工程・漂白工程を経て紙の原料として抄紙機(ペーパーマシン)に送られる。
一方で原料から繊維以外の物質(リグニンなど)が薬品(白液)中に溶け出し、廃液(黒液)が発生する。ここで発生する黒液は濃度20%程度なのでこのままでは燃料として利用できず、蒸留器(エバポレーター)を用いて70%程度まで濃縮して濃黒液として燃料として利用できるように加工する。 ここで、濃黒液を燃料としてボイラー炉内に噴射し燃焼させる。一方で「黒液」を燃焼させた後に炉の下部に残渣が残る。これを「緑液」(スメルト)といい水溶性である。これに生石灰を加えることにより、「白液」に戻すことが出来、またこれを蒸解工程で再利用することが出来る。このことが「ソーダ回収ボイラー」との名称の由来であり、ここでの薬品回収率は98%以上に達し新しい薬品の補給は少量で済むという利点を持つ。 また構造も燃料系統以外は水管ボイラー同様なので、もちろん抄紙機や工場の動力に用いる電力を賄う自家発電で用いる蒸気も同時に取り出すことが出来る。この回収ボイラーによって工場内で使用する殆どの電力を賄っているところが多い。 しかしながら、パルプ製造工程における廃液(黒液)を用いることや、原料(チップ)溶解用の薬品回収が目的でもあることから製紙工場など設置する場所が限られている特殊用途のボイラーであることは言うまでも無い。
だが、重油などの化石燃料ではなく製造工程で排出される言わば「廃棄物」が燃料となりその上、製造に関わる薬品も回収できるということから環境に対する負担が少なく、また燃料や製造に関わるコストが低く抑えられるということでパルプ製造設備を持つ製紙工場では必ずと言って良い程設置されている。