ウイルスバスター
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ウイルスバスター | |
開発元: | トレンドマイクロ |
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最新版: | 2008(16.00.1645) / 2007年12月18日 |
対応OS: | Windows Vista(SP1対応)/XPSP2以上 |
種別: | インターネットセキュリティスイート |
ライセンス: | プロプライエタリ |
公式サイト: | ウイルスバスター |
ウイルスバスター(Virus Buster。日本国外での名称はPC-cillin)とは、日本に本社を置くセキュリティソフトベンダ大手の、トレンドマイクロ株式会社が販売する総合セキュリティ対策ソフトである。
また、ハンガリーのVirusBuster社に同名の製品があるが無関係である。
目次 |
[編集] 歴史
1991年に最初のバージョンがリリースされ、その後は約1年に一度程度のペースでメジャーバージョンアップが行われている。1995年にリリースされた「ウイルスバスター95」からバージョンに年表記が入るようになった。当初はウイルス対策のためだけのソフトであったが、バージョンアップを重ねるごとに様々な機能を取り込み、「ウイルスバスター2004インターネットセキュリティー」以降は総合セキュリティーソフトとなった。
現在、ウイルスのみならず個人情報を盗むスパイウェア、フィッシング詐欺、個人情報漏洩などを防ぐ事が出来る総合的なセキュリティソフトに成長している。
最新版は「ウイルスバスター2008」で、店頭販売開始に先んじて2007年10月19日より、トレンドマイクロのオンラインショップ内の販売と、既存ユーザ向けの無償バージョンアップのためのダウンロードサービスが開始された。店頭での販売は10月26日に開始された。
[編集] 概要
日本国内ではセキュリティ対策ソフトで約40%のシェアを持ち約350万人が利用しており、2004年度は個人向け・法人向け共にトップ。法人向けでは世界でもトップシェアをほこる。日本国外では「PC-cillin」などの名称で約25カ国で販売されている。
販売形態はパッケージ及びダウンロード販売である。「2007」以降の家庭向け製品では1つのシリアル番号で同一家庭内の3台のパソコンまで使用できる事も大きな特色である。これに伴い、2007年以降は1年契約の場合の年会費が3150円から4725円に引き上げられる事になったが、家庭内で複数台のパソコンを使用している場合は、他社製品との比較でかなり安価であるといえる。また年会費が支払われていれば年度ごとの最新版は無料でダウンロードおよび使用が可能である。なお、「2008」からは同一法人に対しても1シリアル3台まで使用可能になった。
競合する同種ソフトウェアとの比較においては、使用者が設定できる項目が少ない事が最大の特徴といえる。これは裏を返せばカスタマイズ性に乏しく、これを本ソフトの欠点として指摘する者は、同種ソフトウェアの中でもカスタマイズ性が高い「ノートン・インターネットセキュリティ」を愛用するパソコンのヘビーユーザを中心として少なくない。だが、ウイルスバスターのカスタマイズ項目の少なさは、パソコンに関する知識の乏しいものが誤って設定を破滅的にしてしまう危険性が極力低くなる様に設計されたがゆえのものであり、また設定も非常に簡潔である事を大きな利点としている。この為、初心者やライトユーザでも取り扱いやすいセキュリティ対策ソフトとして、パソコン雑誌などでは取り上げられる事が多い。しかし、動作には競合製品よりも高いハードウェアスペック(特にRAMメモリ)が要求され、スペックの低いパソコンであるとよく物理メモリが一杯になり、アクセスの遅いハードディスク上の仮想メモリへの読み出しが起こることでパソコンの動きが遅くなることがしばしばある。
他方、2005年4月23日の「CPU使用率が100%になる問題(後述)」によって、企業や個人のコンシューマーが深刻な被害を受けた。トレンドマイクロの社員が自社の営業資料をWinny上に漏らした他、自社のWebサイトが改竄されウイルスが埋め込まれるなどといった不祥事も過去には見られている。
また、姉妹品ソフトの安価版として、SoftBank SELECTIONから「Trend アンチウイルス+スパイウェア」も発売されている。
[編集] 販売製品
(2007年10月26日現在)
- ウイルスバスター2008等(コンシューマ(個人)およびホームオフィス向け)
- ウイルスバスターコーポレートエディション(大企業・中堅企業・官公庁・教育機関向け)
- ウイルスバスタービジネスセキュリティ(中小企業向け・Trend Micro Client/Server Securityの後継製品)
※現在、インターネット上で最新版のウイルスバスター2008がダウンロード可能になっている。
[編集] 機能
- 個人情報漏洩防止
- 総合ウイルス対策&修復
- これには以下の機能がある。
- リアルタイム&手動検索
- 従来からの機能である。システムに常駐し、ウイルス・スパイウェア等への感染を防止する。但し、圧縮ファイルのみ対象外とされる(ウィルスが入った圧縮ファイルを解凍すればウィルスバスターが検知し削除してくれる)。
- メール検索
- 送受信メールに対してのウイルス検索機能。Webメールやメッセンジャーの送受信メールに対するウイルス検索も可能。
- VSAPI(ウイルス検索エンジン)搭載
- ネットワークウイルス感染予防
- ウイルス感染自動修復
- ウイルス緊急警告
- 感染力の強いウイルス感染や破壊力の高いウイルスが出現した際、当該のウイルスに関する警告情報をデスクトップ上に表示してくれる。多くの場合は同時に最新版への自動アップデートが実施される。
- 緊急ロックシステム
- ネットワークウイルスに対しては、上記の機能で対抗する。まずトレンドマイクロからのウイルス警告が、パターンファイルの受信とともに表示される。そしてファイアウォールとジェネリックストリーム検索機能が連携し、感染を防止する。「検出と同時に接続を遮断する」のチェックを入れている場合には、検出と同時にネットワーク接続を遮断する。万一感染した場合は、ウイルス感染自動修復のパターンファールが配信されるので、それで自動的に修復される。なお、ファイヤーウォール機能が有効になっていない場合にはこの機能は動作しない。
- スピード検索
- 過去に検索したファイルを検索せず、変更があったファイルのみ検索する。
- 自動シャットダウン
- ウイルス検索終了後に、異常が無ければ自動的にコンピュータの電源を落とす。
- 無線LANパトロール
- 無線LANに介入されてのネットワークの不正使用を防止するために、ネットワークに接続されているコンピュータやネットワーク機器などの情報を調べる機能。
- マスメールストッパー
- マスメールストッパーは、感染後に大量のウイルスメールを外部に送信するウイルスに感染したときに、メールが配信されてしまうのを防ぐ機能である。
- リアルタイム&手動検索
- これには以下の機能がある。
- URLフィルタリング
- フィッシング詐欺サイト、アダルトサイト、暴力、虐待、違法行為などの有害サイトを遮断する機能。あらかじめ指定されたカテゴリ(フィッシング詐欺、スパイウェア、アダルト・成人向け、違法行為等25種類)の中から、禁止したいカテゴリを選んでそれらのサイトを遮断したり、特定のURLを許可設定(ホワイトリスト)または禁止設定(ブラックリスト)することが可能。なお、ホワイトリスト登録されたURLに対しては、禁止カテゴリに該当しても遮断されない。
- 迷惑メール対策
- 一方的な広告等、迷惑メールやフィッシング詐欺の疑いのあるメールを受信した場合は、該当メールを自動的に迷惑メールフォルダへ移動する。また、言語別に迷惑メール設定することも可能(例えば、英語メールを全て迷惑メール扱いするなど)。なお、メールソフトに表示される「迷惑メール対策ツールバー」が何の操作もしていないのに勝手にオフになり消えてなくなるという問題がネット上で数多く報告されており早急な修正が望まれる。
- ライトモードインストール
- 自動復旧機能
- ウイルスパターンファイルのアップデート後に一定回数連続してプログラムの障害・PCのフリーズ・不正終了・強制終了等が発生した場合、ウイルスパターンファイルを前回のアップデート前の状況に自動的に復旧する。
- ウイルスパターンファイルのアップデート後に一定回数連続してプログラムの障害・PCのフリーズ・不正終了・強制終了等が発生した場合、ウイルスパターンファイルを前回のアップデート前の状況に自動的に復旧する。
(この機能は、後述の「CPU使用率が100%になる問題」で発生した事象の対策として、ウイルスバスター2006以降の製品に搭載された。)
[編集] CPU使用率が100%になる問題
- 個人向けのウイルスバスター2004/2005
- 企業向けのウイルスバスターコーポレートエディション5.02/5.06/5.5/5.58/6.5
- 中小企業向けのTrend Micro Client/Server Security
用として全世界に配布されたウイルスパターンファイル2.594.00(日本時間:AM7:30頃公開)を、特定のWindows環境で適用・更新すると、CPU使用率が100%となり、コンピュータの処理が停止してしまう不具合を生じさせた。これによって日本国内では個人利用者のみならず、JR東日本や大阪市営地下鉄、マスメディア(朝日新聞社、読売新聞社など)等、企業の業務遂行に多大な支障をきたす事になった。
同社では同日午前11時ごろ修正版を公開。同日夕にトレンドマイクロの社長が謝罪会見を開き、原因として配布前の充分な検証テストが行われていなかったことを明らかにした。CPU使用率が100%となる原因は、そのファイルが圧縮されているかどうかの判別がうまくいかず、ウイルス検索が無限回繰り返されることであることも明らかとなった。
24日午前には問題のパターンファイルを検索し自動削除する問題修復ツールの配布も開始された。
しかし、このトラブルでは問題のウイルスパターンファイルを保持するウイルスバスターが起動することによって問題が発生することから、 Windowsの起動時にコンピュータが停止状態に陥ってしまうケースが多く、また情報の提供や問題修復ツールの配布はインターネットを中心に行われていたことから、
- 何が原因で問題が発生しているのか
- どのようにすれば修復ができるのか
といった情報を、サポートを必要とする利用者に十分提供できなかったという側面ももつ。
なお、月曜日の25日には週末にトラブルが確認されていなかった企業において同様の問題が発生。同社は26日、652社の企業に影響が及んだことと、6社で復旧が完了していないこと、同時点で補償を行わないことなどを発表した。
その後トレンドマイクロは今回のシステム問題を解決するために24時間体制の緊急コールセンターを開設。(5月8日午前0時で終了)またオンサイトでのシステム復旧サービスを無償で実施した。それ以外の方法でシステム復旧のために顧客が負担した費用を、トレンドマイクロで設定した規定に沿って補填をした。(6月15日受付終了)障害報告のあった製品を使用中の全契約客について、問題発生の有無を問わず、迷惑をかけたことに対するお詫びとして、契約期間の無償1ヶ月延長を行った。(6月15日受付終了)被害を受けて自分で復旧したユーザーは、書類を郵送してもらい返送すると+3ヶ月、計4ヶ月延びた。この措置は個人ユーザーのみと思われる。復旧窓口の利用者数は、2005年5月9日 - 6月15日までの総計で28,300件、350万ユーザ。
また今後の技術的対策としてトレンドマイクロは「ウイルスパターンファイル」品質改善策として今回の問題発生直後に、「ウイルスパターンファイル」作成と同検証の体制の再構築を行った。さらに日本においても新たな「ウイルスパターンファイル」の検証を行う体制を構築、実施を開始。また、「トレンドマイクロ テストセンター」を日本IBM株式会社大和事業所内に開設し運用開始している。
[編集] 関連項目
- アンチウイルスソフトウェア
- コンピュータウイルス
- トレンドマイクロ
- スパイバスター
- オンラインスキャン
[編集] 外部リンク
- トレンドマイクロ公式ページ
- トレンドフレックスセキュリティ
- トレンドマイクロオンラインスキャン
- ウィルスバスター2007電子版取扱説明書
- ウイルスバスター2007インストール後に処理が重く(遅く)なる問題と対処法