アンダーワールド (2003年の映画)
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アンダーワールド Underworld |
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監督 | レン・ワイズマン |
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製作総指揮 | テリー・マッケイ スキップ・ウィリアムソン 他 |
製作 | ゲイリー・ルチェシ トム・ローゼンバーグ リチャード・S・ライト |
脚本 | ダニー・マクブライド |
出演者 | ケイト・ベッキンセイル スコット・スピードマン シェーン・ブローリー ビル・ナイ マイケル・シーン他 |
音楽 | ポール・ハスリンジャー |
撮影 | トニー・ピアース=ロバーツ |
編集 | マーティン・ハンター |
配給 | ギャガ・コミュニケーションズ |
公開 | 2003年9月19日 2003年11月29日 |
上映時間 | 121分 |
製作国 | アメリカ・ドイツ・ハンガリー・イギリス |
言語 | 英語 |
制作費 | $22,000,000 |
興行収入 | $51,970,000 |
次作 | アンダーワールド: エボリューション |
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Variety Japan | |
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IMDb | |
アンダーワールド(Underworld)は2003年制作のアメリカ映画。吸血鬼一族と狼男一族の間に続く、何百年にもわたる戦いを描くアクション映画。
目次 |
[編集] キャスト
- ケイト・ベッキンセイル:セリーン
- スコット・スピードマン:マイケル・コーヴィン
- シェーン・ブローリー:クレイヴン
- マイケル・シーン:ルシアン
- ビル・ナイ:ビクター
- ロジー・ビー:カーン
- ソフィア・マイルズ:エリカ
- ケビン・グレヴィオー:レイズ
- アーウィン・レダー:ジンゲ
- ジータ・ゴロッグ:アメリア
[編集] ストーリー
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
人間世界の裏側で、吸血鬼(ヴァンパイア)族とその従属であった狼男(ライカン)族は、1000年以上もの長きに渡り、血で血を洗う抗争を繰り広げていた。しかしその闘争の中で一族最強の長・ルシアンを失ったことを契機にライカン達は四散。それから6世紀あまりが過ぎ、この戦いは間もなく吸血鬼側の勝利に終わろうとしていた。
女性ながら吸血鬼族の優秀な”ライカンの処刑人(デス・ディーラー)”であるセリーンは、ある日仲間たちと共に不審な動きしているライカンの2人組を追跡していた。しかし地下鉄のホームに入ったところでライカンたちがセリーン達を察知して、人間たちを巻き込む激しい銃撃戦になってしまう。セリーンは追跡行の末に地下道で1人のライカンを仕留めるが、その先の地下道の奥底から無数のライカンの唸り声を聞く。
町の地下の奥深く、そこは闇に消えつつあったはずの無数のライカン達が潜んでいた。間近に迫ったヴァンパイア達への襲撃を前に血の気にはやった者同士が鬱憤晴らしの殴り合いに講じている。そこに一発の銃声が鳴り響き、奥から人垣を割ってオールバックの長髪をなびかせた1人の男が猟銃を肩に担ぎながら入ってくると「狂犬のようなマネなするな!!」とイラつき気味の部下たちを一喝した。その男こそ死んだと思われていたルシアンだった。ライカン達は滅んだわけではなく、ルシアンの指示のもと吸血鬼族の目を逃れ一旦地下に潜り、来るべき反撃の機会を窺っていたのだった。
一度アジトに戻ったセリーンは、一族のリーダーであるクレイヴンに地下道での出来事を告げ、取り逃がしたライカンの追跡調査続行を進言する。彼らは軍が開発した新型弾を対吸血鬼用に改良し紫外線を封じ込めた弾丸まで開発していた。その結果仲間の1人がやられ、もうひとりが行方知れずになっている。もし無数のライカンが密かに襲撃の機会を窺ってるとしたら・・・しかしリーダーのクレイヴンは「そんなことはありえない」とセリーンの言い分をにべも無く却下し、何故か報復に動こうとしない。間もなく一族最強の3長老の1人であるマーカスの復活式があり、その為の重要な来賓・アメリア卿も出迎えねばならない。今は屋敷内に動揺を起こしたくないので軽率な報復はするな、と。その消極的な言い分に納得がいかないセリーンがなおも食い下がると、クレイヴンは「では捜索はソーンに任せる」と命じ、セリーンが直接動くことを禁じた。憤慨したセリーンは長老の棺の部屋の前で「ビクターなら町中を徹底的に調査させるのに・・・なぜクレイヴンが後任に?」とエリカに不満を漏らす。そのまま自室に戻り、歓迎会の準備もそこそこに、入ってきたクレイヴンにも構わず地下鉄での戦闘現場を写した映像を調べ始める。すると、どうやら2人組のライカンがある1人の人間の青年を追っていたらしい事実を突き止める。
「何故、ライカンが人間を尾行しているの?」
ライカン達の一連の行動に疑問を持つセリーンは、その人間の男が何らかの鍵を握っていると確信するが、クレイヴンは「奴等は食べる時以外は人を襲わない」と答える。確かに今までの例からすれば、クレイヴンの言うとおりに間違いないのだが・・・。どうしても疑念がぬぐえないセリーンは、来賓の歓迎パーティをすっぽかし、ライカンの隠れ家の手がかりを求めて、単独で人間の青年=マイケルの住むアパートに向かう。
同じ頃、ルシアンもまた、マイケルを拉致すべく自ら行動を開始しようとしていた・・・。
[編集] 登場人物
[編集] 吸血鬼族(ヴァンパイア)
- セリーン SELENE
- 吸血鬼族特有の美しい容姿を持つ絶世の美女。一族の優秀な戦士であり、ライカンの処刑人(デス・ディーラー)。かつて家族と共に狼男に襲われ、そこを吸血鬼のビクターに救われる。生き残ったのは彼女1人だけであり、家族を奪ったライカンに復讐するため、自ら望んでビクターに噛まれて吸血鬼となった。それ故に彼女が心から信頼を置いているのはビクターのみであり、ライカン討伐の作戦行動以外は常に孤独の中に身を置いている。外出するときは、必ず漆黒のレザースーツに同色のロングコートを羽織っている。女性ながら銃火器の扱いや体術に優れた資質を持ち、数え切れないほどのライカンを葬ってきた。
- レイズ達の動向を追跡するうちに彼等の標的となっていたマイケルと偶然出会い、ルシアンの襲撃で負傷した際に命を救ってくれた彼を1人の男として意識するようになる。自分を吸血鬼と知ってもなんら怖れることもなく一人の人間として接しようとするマイケルの誠実さに惹かれ、吸血鬼になって久しく忘れていた人を愛するという感情を取り戻すと、マイケルをライカンやクレイヴン一味の手から守ろうと強く決意する。その想いはルシアンに噛まれて敵である狼男になってしまったことを知っても揺らぐことはなかった。
- 使用火器:ベレッタM92フルオートマチック/ワルサーP99R / ヘッケラー&コック USP 9mm(改)
- この他にも投擲武器として銀製の円盤型手裏剣を携帯している。
- クレイヴン KRAVEN
- ビクターの館に住む吸血鬼族の纏め役としてビクターが眠りにつく前に直接後任指名されたリーダー格。戦士ではないので直接戦いの場に赴くことは殆どせず、もっぱら館に残って対ライカンの指揮をとる。エリカから想いを寄せられているが、クレイヴン自身は美しいセリーンをいずれ自分の妻とするつもりでいる。しかし戦士である彼女からは、クレイヴンがリーダーであるにもかかわらず館に引きこもり積極的に戦場に出ようとしないことを理由に常に反抗され、自分に従うようクギをさすものの見向きもされていない。
- 吸血鬼族に伝わる歴史文献では、6世紀前にルシアンを討った人物であるとされ、その際にルシアンの腕に刻まれていた紋章の皮を持ち帰っている。戦士ではないクレイヴンが最強の狼男であるルシアンを倒したとされていることを、セリーンは不可思議なことと捉えていた。
- ビクター VIKTOR
- 吸血鬼族・最強の3長老の1人。ライカンへの報復へ動かず、またマイケル救出時の襲撃者が死んだはずのルシアンである事に気付き、クレイヴンの行動に不信を持ったセリーンが己の導き手として力を借りるために、自らの血を使い、已む無く1世紀早く眠りから復活させる。その際にセリーンから見せられた記憶のヴィジョンが不完全なものであったため、クレイヴンを呼び出し、セリーンを目の前に連れてくるように命ずる。その戦闘能力は強大で、並みの狼男では全く歯が立たない。戦闘用に専用の剣を帯同している。
- ルシアンとは、吸血鬼と狼男の対立関係の他に個人的な浅からぬ因縁があり、ルシアン抹殺は自身の課題となっていた。6世紀前にそれは達成されたかに思われたが・・・。
- 過去にセリーンを救ったことになっているが、実はその行為にも隠された事実があり、セリーンには知らされていない。
- カーン KAHN
- 吸血鬼族の戦士。また兵器開発や改良を担当している。狼男族が対吸血鬼用に開発した「紫外線弾」に対抗し、命中すると血液中に液体金属の硝酸銀を撒き散らす「硝酸銀弾」を開発している。同族の中でさえ孤独を貫こうとするセリーンも、処刑人という立場上、武器関係で普段から世話になっている関係からか、彼とだけは良き話し相手となっているようだ。
- 使用火器:M4オートライフル、MP5Kサブマシンガン、ヘッケラー&コック USP 9mm(改)
- エリカ ERIKA
- クレイヴンに付き従う吸血鬼族の女。その行動原理は、クレイヴンに気に入られることを主眼に行なわれているため、恋敵になっているセリーンを常に警戒している。それ故セリーンが少なからずマイケルに気がある事を見抜くや、セリーンが裏切り者として処罰されることを期待して、密かにビクターの屋敷の明かりを消して逃亡の手助けをしたりもする。
- アメリア AMELIA
- ビクター等とは別の地域を率いる吸血鬼族の女族長。3長老の1人・マーカスの復活祭に出席するため、列車に乗り秘密裏にビクターの館に向かっている最中、獣化したレイズ率いる狼男族の急襲にあい、あえなく命を落とす。
- 一族最強の3長老の1人であると思われるが、作中では「客人」とのみ表現されているだけで、ハッキリとした言及はされていない。
- ソーン SOREN
- クレイブンの片腕的存在。二本の鞭で戦うが、レイズに襲われ死亡する。
[編集] 狼男族(ライカン)
- ルシアン LUCIAN
- 6世紀前に死んだとされていた狼男族最強の力を持つ長。変身前の状態でさえ狼男に有効なはずの銀の弾丸を頭や体に数発喰らっても自らの力で体外に押し出してしまうほど。実はある計画のために身を潜めて地下に潜り、反撃の機会を窺っていた。仲間のみだりな闘争心をいさめる、吸血鬼との戦いに「紫外線弾」を導入するなど、一族を束ねる長だけあってその知性もずば抜けている。変身前はオールバックの長髪で黒のロングコートを羽織り30代半ばほどに見える。右腕には収納可能な小型剣を暗器として装備しており、普段はコートの右袖に隠している。
- 過去にビクターと浅からぬ因縁があり、その事が吸血鬼と狼男の抗争を更に激化させた要因となっている。
- 作品の中での彼は、狼男としての力は見せ付けるものの、レイズらとは違い過去の回想シーン以外では明確な変身シーンは出てこない。
- 使用火器:SPAS 12ショットガン、デザートイーグル.50AE
- レイズ RIZE
- ルシアンの忠実な腹心。変身前は剃髪の黒人の大男でルシアンに次ぐ戦闘能力と耐久力を誇る。最初のマイケル拉致作戦に失敗し、銃撃・白兵戦によって追跡してきたセリーンの仲間達を倒して辛くも交わすも、追跡してきたセリーンに仲間の1人をやられ、自身も手酷い傷を負う。マイケル奪回をルシアン自らが引き継ぐことになり、代わりに彼はクレイヴンからもたらされた情報を元に襲撃部隊を率いて吸血鬼族のアメリア卿の一団を急襲し全滅させる。
- ルシアンには絶対服従しており、単なる部下というよりは兄弟分と思しき関係が見て取れる。ビクター率いる吸血鬼族によるアジト襲撃の際には、クレイヴンの硝酸銀弾に倒れたルシアンを発見した後、吸血鬼たちに単身戦いを挑む。
- 使用火器:STEYR TMP 9x19マシンガン
- ジンゲ SINGE
- 狼男族の医師。ルシアンの命により、仲間が拉致したある血筋に纏わる人間や吸血鬼を実験材料に、狼男族を生き長らえさせるための研究している。また負傷した仲間たちの治療も行なっている。マイケルが吸血鬼族の持つ隠れ家の1つに匿われている事を掴み仲間を率いて急襲するも、同行していたセリーンの反撃にあい、逆にルシアン生存の証言者として捕えられてしまう。
[編集] 一般人
- マイケル・コーヴィン Michael Corvin
- ある特殊な血筋に生まれたために狼男族からマークされ、狙われるはめになる人間の若き青年医師。ライカン達に追跡されていることを知らず、地下鉄構内で不意に見かけたセリーンの美しさに強く心を奪われる。その後、何故か自分の部屋に侵入していたセリーンと再会。それと同時に一緒に逃れる際にルシアンの襲撃を受けて重傷を負ったセリーンを命の危機から救ったことで関係が急接近するが、その際ルシアンに噛まれたことが原因で狼男のウィルスに感染し、彼自身が吸血鬼の宿敵である狼男になってしまう。その事実を知ってなお、一族との掟を破ってまで自分を助けようとするセリーンを、彼もまた深く愛するようになる。
[編集] 作品世界におけるキーワード解説
作品を語る上で重要なキーワードを簡単に解説する。
- 不死の血
- この作品における吸血鬼と狼男は、ある不死の血脈から同時に生み出されたものである。その実体は突然変異したウィルスによるもので、保菌者の血液を血管や粘膜から直接受けることにより吸血鬼や狼男となる。しかしそれは非常に強力なもので、強制的な体の変質を伴なうために、耐え切れず死んでしまう者が殆ど。そのため、吸血鬼や狼男になるには、何らかの形で不死の因子を持っていることが条件となる。また不死の一族は、その血液中に自身の記憶を刻み込んでいて、長老クラスともなれば、他の吸血鬼や狼男の血を受けるだけで、自分の居ない間に何があったのかを正確に読み取ることができる(後述の復活祭も合せて参照)。
- 吸血鬼
- この作品で示される吸血鬼は、「日光(紫外線)に弱く、浴びると灰になる」「一定期間生き血を摂取しないと死ぬ」などごく一般的に語られる吸血鬼のいくつかの特徴をもっている。しかし、この作品独自の設定も多く、次のようなものが上げられる。
- 吸血鬼化した後に必要な栄養は血液のみであり、人間と同じ物は口に出来ず、食べても体が受け付けないようになる。(次作で明らかになった設定)
- 十字架は効き目がない。(次作での描写で明らかになった設定)
- 完全な不死身ではなく、日光を浴びる以外でも、頭部など重要な身体器官を破壊される等、外的衝撃によっても死亡する。
- 狼男
- 「銀製の武器に弱い」「満月になると体が反応し変身が始まる」等、大まかには一般に語られる狼男の設定を引き継いでいる。この作品独自の設定では、次のようなものが上げられる。
- 満月に関係なく、己の怒りに反応し自らの意志で戦闘形態に変身でき、怒りが収まればまた人間に戻ることができる。(次作では、満月に依存する事無く変身できるようになったのは後代になってからであり、初期の狼男は一度変身したら2度と人間の姿には戻れない、といった設定がなされている)
- 変身後であっても頭部など重要な身体器官を破壊される、首を折られるなどすると死亡する。
- 復活祭
- 吸血鬼族は3人の長老が約1世紀ごとに順番に復活し、持ち回りで一族を束ねて管理している。ある1人の長老が眠りに入る前は、眠りにつく長老が後任を指名し、その者が長老不在時の一族におけるあらゆる行事を取り仕切る(作中ではクレイヴンがビクターに指名されてリーダーに納まっている)。長老の復活の儀式は、原則として長老クラスの力を持つ者が行なうことになっており、それは前述した「一族の血の記憶」を引き継がねばならないからである。アメリア卿は、長老のマーカスを復活させるためにビクターの館に呼ばれていたように、一族の中では長老クラスの能力の持ち主であることが窺われる。しかし狼男族の襲撃であっさりやられてしまったように、ビクターのように戦闘的な能力に秀でているわけではないようだ。
[編集] エピソード
- 狼男レイズ役のケビン・グレヴィオーは、この作品の原作者である。彼がかつて遺伝子工学を学んでいた頃に得た知識から、狼男と吸血鬼を単なる神秘主義の怪物話ではなく科学的にアプローチするヒントを得て、ある特別な1つの血統から生み出されたウィルスから狼男と吸血鬼が誕生したという設定を考え出した、とメイキングのインタビューで告白している。
- セリーン役のケイト・ベッキンセイルとルシアン役のマイケル・シーンは、この映画で共演している際は夫婦であったが、数ヵ月後に離婚。後にケイト・ベッキンセイルは、この作品が縁になり監督のレン・ワイズマンと再婚した。なおマイケル・シーンとの間には娘が1人いる。
- この映画はそもそも、続編である『アンダーワールド: エボリューション』と合せて1つの作品だったが、次々に新しいアイデアが出された事で尺が足りなくなり、前半のビクター絡みのエピソードを膨らませて1つの作品として仕上げた。この作品がヒットしたことにより、すぐに続編の制作がスタートしたが、若干の設定修正のみでスムーズに進んだという。また古き時代のゴシックの世界観を出すため、画面全体の色調をブルーに統一し、主要キャストをあえてイギリス人俳優のみでキャスティングしている。
- CGに頼らず、着ぐるみによる特撮とワイヤーアクションを使ったのは、この映画の売り込みの際に、よりリアルなクリーチャーを見せたいという思いがあったからだ、と監督自身が告白している。参考にしたのは『エイリアン』シリーズ、『パンプキンヘッド』『プレデター』等。また狼男の造型は、映像化したときの効果(暗闇での撮影が多くなるため、全体のフォルムが判り辛くなる)を考えて、全身に体毛がビッシリしたものではなく、あえて筋組織を露出したものを採用している。