アイアンブ
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アイアンブ(iamb)またはアイアンバス(iambus)はさまざまなタイプの詩に用いられる韻脚のこと。元々は古代ギリシアの韻律学で使われた用語で(ギリシャ語:ἴαμβος, iambus, イアンボス、イアムボス、短長格)、短い音節の後に長い音節が続く詩格(たとえば、i-amb)を意味した。それが英語詩では、音節の強弱による詩を説明するのに適用され、弱いアクセントの音節の後に強いアクセントの音節が続く脚構成(たとえば、a-bove)に用いられるようになった(弱強格、抑揚格と訳される)。その反対は、トロキー(強弱格、長短格)である。
目次 |
[編集] 種類
[編集] 三歩格(trimeter)
古代ギリシアのイアンボス・トリメトロスは、ギリシア悲劇や喜劇で使われた韻律である。「x」はアンケプス(短くても長くてもよい音節)、「-」は長(longum)、「u」は短(brevis)として、「x - u -」を1単位としてそれを3回繰り返す。つまり、
- x - u - x - u - x - u -
の形である。具体的にエウリピデスの『ヒッポリュトス』の1行(1053)を例にあげると、
- πέραν γε πόντου καὶ τόπων Ἀτλαντικῶν
は「u - u - - - u - u - u -」(短長・短長・長長/短長・短長・短長)となる。
一方、英語詩の弱強三歩格は、3つの弱強格で1行を構成する。ウィリアム・ブレイクの『I Love the Jocund Dance』を例にあげると、
- I love the joc-und dance
となる(太字が強いアクセント)。
[編集] 四歩格(tetrameter)
弱強四歩格の例は、ルイス・キャロルの『ジャバウォックの詩』に見ることができる。
- 'Twas bril-lig, and the slithy toves / Did gyre and gimble in the wabe
さらに、通常四行連の形式の中で、弱強四歩格1行の後に弱強三歩格が1行続くと、バラッドの韻律になる。
- Be-cause I could not stop for Death, / He kind-ly stopped for me(エミリー・ディキンソン『poem #712』)
[編集] 五歩格(pentameter)
弱強五歩格は、英語詩やドイツ語詩で最も一般的に用いられる韻律の1つで、5つの連続した弱強格で1行を構成する。ウィリアム・シェイクスピアの『リチャード三世』を例にあげると、
- A horse! A horse! My kingdom for a horse!
となる。
[編集] 七歩格(heptameter)
バンジョー・パターソン(en:Banjo Paterson)は弱強七歩格の韻律で多くの詩を書いている。それは時に「fourteener」と呼ばれている。
- I s'pose the flats is pretty green up there in Ironbark. (バンジョー・パターソン『The Man from Ironbark』)
サミュエル・テイラー・コールリッジも『老水夫行』の中でこのパターンを用いている。(もっともこれは普通、弱強四歩格と弱強三歩格の行を交互に連ねて構成したように書かれる)。
[編集] イアンボスの特性
アリストテレスは、イアンボスは日常会話に向いている[1]が、荘重さがないので弁論には不向きである[2]と言っている。また、風刺詩にイアンボスが取り入れられたのは、風刺詩に向いているからだとも言っている[3]。
[編集] 脚注
[編集] 参考文献
- アリストテレース『詩学』ホラーティウス『詩論』訳・松木仁助、岡道男(岩波文庫)
- アリストテレス『弁論術』訳・戸塚七郎(岩波文庫)