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あたご型護衛艦 - Wikipedia

あたご型護衛艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

あたご型護衛艦

艤装中のDDG-178 「あしがら」
艦級概観
艦種 ミサイル護衛艦(ミサイル駆逐艦
就役開始 2007年3月15日
退役完了 就役中
前級 こんごう型護衛艦
次級 最新
性能諸元
排水量 基準排水量 7,700t
満載排水量(予想) 10,000t
全長 165m
全幅 21m
吃水 6.2m
深さ 12m
機関 COGAG 2軸推進
ガスタービン 4基 100,000ps
速力 30ノット以上
乗員 300人
武装 Mk45 Mod4 5インチ60口径単装速射砲 1門
SSM-1BSSM4連装発射機 2基
324mm3連装短魚雷発射管HOS302 2基
ファランクスCIWSブロック1B 2基
Mk41 VLS 96セル
 スタンダードミサイル(SM-2MR)
 アスロック対潜ロケット
搭載機 ヘリコプター(格納庫のみ) 1機
レーダー 対空レーダー AN/SPY-1D(V)
対水上対空レーダー OPS-28D(予想)
ソナー 艦首バウソナー SQS-53C
曳航ソナー OQR-2
射撃管制装置 ミサイル:Mk99/SPG-62 3基
電子戦 ESM/ECM:NOLQ-3(予想)
チャフ発射機 4基
言語 表記
日本語 あたご型護衛艦
計画名 7,700トン型護衛艦
14DDG
英語 Atago class destroyer

あたご型護衛艦(あたごがたごえいかん、JMSDF DDG ATAGO class)は、海上自衛隊が保有するイージスシステム搭載(イージス艦)のミサイル護衛艦である。

目次

[編集] 概要

こんごう型護衛艦に次いで建造された海上自衛隊のイージスシステム搭載ミサイル護衛艦であり、耐用年数を迎える旧式のたちかぜ型護衛艦の代替艦として建造が計画された。あたご型によって、たちかぜ型1番艦「たちかぜ」(76年度就役)と2番艦「あさかぜ」(79年度就役)と代替した。

イージスシステム搭載艦としては世界最大であり、自衛隊が保有する戦闘艦としても最大級の艦艇となる(海自の全艦艇の中でもましゅう型補給艦ひゅうが型護衛艦に次ぐ規模)。

[編集] こんごう型からの変更点

  • 基本的にはこんごう型の発展型である。しかしベーシックモデルである米イージス駆逐艦アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦ヘリコプター搭載型のフライトIIAに移行していることや、防衛予算の削減に対応した護衛艦隊の大規模な改編(八機八艦体制の廃止)に対応する必要があることから、SH-60K1機を搭載可能な格納庫が設けられることになった。この格納庫により失われた後方視界の確保のため、艦橋後方にある2面のレーダーの装備位置も1層上げられた。ただし現時点では固有の搭載機は無く、航空要員も乗り組んでいない。
  • 事前の完成予想図に比べ、外観上の変更点は大幅に少なくなっている。苦しい国家財政を鑑みて船価を抑えるべく船体艦尾の延長を最小限にした結果、ヘリ格納庫構造物の容積が圧迫され、2機搭載が求められていたヘリが1機に減少し、天蓋部に埋め込まれる後部MK41VLSのセル数も半分に縮小せざるをえなくなった。代わりに艦首側の前部VLSのセル数を倍増している。短魚雷発射管の艦橋構造物への移設、内装化も実現しなかった。
  • こんごう型と違い、最初からミサイル防衛での使用を考慮して建造されているが、現在は弾道ミサイルの捜索・追尾のみ可能で迎撃能力は有しない(こんごう型は、弾道ミサイル迎撃艦とすべく改修中)。イージスシステムのバージョンは、こんごう型護衛艦がベースライン4(1~3番艦)・5(4番艦)であるのに対して、最新のベースライン7.1Jに進化している。イージスシステムの中核であるフェイズド・アレイ・レーダーは、こんごう型護衛艦が搭載するSPY-1Dの改良型であるSPY1-D(V)が搭載されている。天頂方向の捜索追尾能力が強化されているほか、SPY-1Dにおいて弱点とされていた低高度小型高速目標の捕捉能力が改善されているとされる。データリンクは最初からリンク11とリンク16を搭載している。
  • 砲はこんごう型のオート・メラーラ54口径127mm単装砲ではなく、シールドのステルス化を図った米国製Mk45Mod4・62口径5インチ単装砲が搭載される。Mk45Mod4はアーレイバーク級でも搭載されているもので、オート・メラーラ127mm砲に比べて最大発射速度が半分弱(20発/分程度)であるため本来的には対空戦闘には不向きである。しかしイージスシステムとの適合性がよく、射撃管制はこんごう型(FCS-2)と異なりイージスシステムに統合されている。これに併せて電子光学系補助システムも装備されている。Mk45Mod4は砲身を8口径分長く取り、砲耳等の強度を上げ、強装薬を使用することにより、砲口時圧力をオート・メラーラ127mm砲の10メガジュールから18メガジュールまで上げることができるようになった。そのため通常弾での最大射程は38kmまで延伸され、対地攻撃に有利になったといわれている。また、通常弾とは別にロケットと簡易な慣性航法装置によって射程を116km以上にも伸ばせるERGM(射程延伸誘導弾)という特殊砲弾の発射も可能だが、現在のところ海上自衛隊ではERGMを採用していない。その理由は、日本国憲法や周辺諸国等との摩擦を起こさないために、遠距離対地ターゲティング能力を自ら放棄している現在の海自では、優先順位のかなり低い装備要素と言えるからだ。
  • こんごう型護衛艦では、Mk41VLSは前部29セル・後部61セルであったが、本型では前部64セル・後部32セルと前後のセル数が逆転した上にそれぞれ3セルずつ増加している。セル総数がこんごう型護衛艦の90セルから96セルに増加しているのは、フライトIIAと同じくミサイル再装填用のクレーンを、洋上でのミサイル再装填は難しいため、無理に強行すると事故が起きる危険性が高いとして搭載しなかったことによるものである。
  • マスト形状がはしご状の組み合わせで構成される在来型のラティスマストから、5000トン型護衛艦予想図にも取り入れられている日本独自の設計のステルス性能を高めた平面構成マストへ変更されている。さらに煙突の形状の変更や舷梯を上構内への収納型にすることによりステルス性能の強化が図られている。詳細は謎だが、艦艇の場合のステルスとは、姿を隠すことではなく敵に艦種等を誤認させる効果を狙うものがほとんどだ。
  • 搭載艇は、こんごう型に搭載されていた7.9m内火艇より大型化され、ひゅうが型や5000トン型に搭載予定の11m作業艇に変更された。この点は、搭載艇を複合艇だけとする世界的な流れに逆行している。この11m作業艇は、形態的にステルス性に配慮されているようであるが、ラファイエット級フリゲートのようにシャッターを通じて艦内に搭載されておらず、レーダー反射断面積低減の効果は限定的であると思われる。

[編集] 準同級艦との比較、相違点

準同級艦といえるあたご型とアーレイ・バーク級フライトIIAと韓国・世宗大王級駆逐艦であるが、それぞれの国における各艦の運用体制が異なる為、ほぼ同システムの艦艇にも関わらず違いを見て取る事ができる。

あたご型は、フライトIIAと比べると、群司令官座乗の旗艦としての司令部機能を充実させた為、艦橋が2層高くなっており、船体長・大型の艦橋構造物・平甲板から立ち上がったヘリ格納庫など、むしろタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦に匹敵するほどのサイズになっている。艦の全長はフライトIIA比で約10m、こんごう型比で4m延長している。その為、基準・満載排水量ともフライトIIA比で1000トン近く大型化している。

一方、フライトIIAは、50隻を超える整備を行うアーレイバーク級というコスト重視の量産型防空艦であり、あたご型に比べて、共同交戦能力に依存をしたサブシステムとしての性格を有している。

また、世宗大王級駆逐艦は、国力上多数の大型艦艇の配備が行えない韓国海軍の事情もあり、司令部機能・多数のVLS・ゴールキーパーRAMを併用する充実した近接防空装備など、1隻に多数の要素を詰め込んだ重武装艦となっている。

あたご型は平甲板型で、上記の準同型艦と比べてヘリ甲板・格納庫が若干広いがヘリの運用は1機のみである(設備のみ搭載、固有機・機材・人員は未搭載)。一方、フライトIIA、世宗大王級駆逐艦は長船首楼型でヘリを2機運用する。

[編集] その他

予算規模は14DDGと呼ばれていた1番艦「あたご」が1,453億円で、15DDGと呼ばれていた2番艦「あしがら」が1,389億円である。そのうち、イージスシステム関係取得費用は509億円である。本型導入の際米議会で当初承認可決されたイージスシステムは旧ベースライン7で、現在で言う所のベースライン7+BMD3.6のシステムであったがその後の変遷によって現状の装備となっている。

あたご型の装備上のアップデートの可能性としては、米海軍で既に検討されているのと同様に、イージスレーダー補完の回転式Xバンドレーダー装備とESSM装備による防空多重化・20mmCIWSのSeaRAM置換化などが考えられる。しかし財政上と取得システム上、速やかな予算措置は考えにくい状況にある。

[編集] 同型艦

[編集] DDG-177 あたご

      二代艦長:清水博文(しみず ひろふみ)1等海佐(前職:第2護衛隊群幕僚)

[編集] DDG-178 あしがら

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

あたご型護衛艦

あたご | あしがら

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