ルシファー
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ルシファー(Lucifer)とは、キリスト教の伝統で、サタンの別名とされる。(イスラム教ではイブリースに相当)「ルシファー」は英語からの音訳で、その他日本では、ルキフェル(羅)、ルシフェル(西 Lucifer, 葡 Lúcifer)、ルチーフェロ(伊 Lucifero)などとも表記される。
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[編集] 語源
Lucifer はもともと、ラテン語で「光を帯びたもの」(lux 光 + -fer 帯びている、生ずる)を意味し、キリスト教以前から「明けの明星」を指すものとして用いられ、オウィディウスやウェルギリウスなどの詩歌にも見られる語である。無論、ヘブライ語の旧約聖書にも、ギリシャ語の新約聖書にも使われてはおらず、元来は、サタンや堕天使といった伝説と一切無縁のものだった。
起源はバビロニア神話の雷鳥アンズーともカナン神話のシャヘルであるとも言われている。アンズーは至高神エンリルの元から魔力を司る「天命の書板」を奪おうしている。また、明けの明星シャヘルは父である至高神エルの地位を奪うため、母アシュラを娶ろうとした。母なる女神との婚姻は、至高神としての地位獲得の証であった。
[編集] 概要
キリスト教において、この語を、サタンと結びつけたのは、オリゲネスが最初であると考えられている(ただし彼の著作はギリシャ語なので、おそらくオリゲネスのラテン語訳がサタンとしてのルシファーの初出)。彼は、「エゼキエル書」、「イザヤ書」、「ヨブ記」(1章-)、「ルカによる福音書」(10章18節)に、隠された堕天使の存在を見出した。その後、テルトゥリアヌスを始めとする初期の教父たちも、これについて論じた。さらに4世紀、ヒエロニムスは、聖書のラテン語訳(ヴルガータ)において、ヘブライ語の「明けの明星」を意味する言葉 הֵילֵל(イザヤ書 14章12節)を、(古ラテン語訳を踏襲して?)Lucifer の語を当てて訳した(なお、この箇所の「明けの明星」は、本来、バビロンの王を指すものである)。
その後のキリスト教の伝統的解釈によれば、ルシファーは元々全天使の長であったが、土から作られたアダムとイブに仕えろという命令に不満を感じて反発したルシファーは神と対立し、天を追放されて神の敵対者となった。「ヨハネの黙示録」の12章7節をその追放劇と同定する場合もある。また、アダムの最初の妻・リリスが夫の元から離れた後ルシファーと結婚したという説もある。 ミカエルとは双子の兄弟であったという説もあり[要出典]、ルシファーの方が兄にあたる。この場合、ルシファーは褐色の肌、ミカエルは青い肌で描かれることが多い。
[編集] 文学
西欧文学において、ルシファーが登場する名高い文学作品としては、ダンテの『神曲』とジョン・ミルトンの『失楽園』が挙げられる。特に後者は、神に叛逆するルシファーを中心に据えて歌い上げたため、その後のルシファーにまつわる逸話に多く寄与することになる。
[編集] 俗説
- ルシフェルが堕天した際、『エル』の称号を失って名前が「ルシファー」になったとされる。
- ウェブサイトや学問的ではない神話・伝説の書籍で説の大元の典拠が示されることなく記述されている。
- 通常はラテン語としてのルキフェルが英語読みされてルシファーになったに過ぎないと考えられる。