シリアの国旗
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シリアの国旗は、1980年に制定された。この国旗は、1958年から1961年の間も使われていた。
最初のシリア国旗は、1920年にデザインされた。これは現在のヨルダンの国旗に似ているが緑色と白色の順序を逆にしたものであり、アラブ世界で最初に汎アラブ色を取り入れた国旗だった。しかし当時フランスの委任統治領だったため、フランスはこの旗を、青地に白い円、左隅(カントン)にフランスの国旗を配した旗に代えさせた。さらに一ヵ月後、緑・白・緑の水平三色旗に、左隅にフランス国旗を配した旗に代えられた。この旗は1925年から1936年まで使用された。同時期シリアはアラウィー派地域やドゥルーズ派地域などにも分割されており、それぞれ左隅にフランス国旗を配した旗を制定した。
この旗は1936年に、上から緑・白・黒の三色の帯があり、白帯のところに3つの赤い星(五芒星)があるデザインに代えられ、次いでフランス・シリア条約が制定されシリアは部分的な独立を得た。1944年の独立時もこの旗であった。
1958年にシリアとエジプトがアラブ連合共和国を結成した時に、赤・白・黒で緑の星が二つある現在と同じデザインのものが使われた(二つの星はエジプトとシリアを意味する)。1961年にアラブ連合を離脱した際に、古いデザインに戻ったが、1963年にバアス党のクーデターでまた赤・白・黒の水平三色旗に戻った。この時には星は3つとなった(同時期にバアス党が政権を奪取したイラクの国旗と同様のデザインであり、当初はイラク・シリア・エジプトによる汎アラブ国家建設の構想もあったとされるが、実現しなかった)。
1971年、リビアのカダフィ大佐主導で、シリア・エジプト・リビアの汎アラブ主義国がアラブ共和国連邦を結成し国旗を統合した。この連邦は、赤・白・黒の水平三色旗の中央にアラビア語で「アラブ共和国連邦」と書かれた巻物を持つ金の鷹の旗を国旗に制定したが、この連邦は政治統合を見ないまま1977年に解消した。
1980年より現在のデザインが使われるようになった。この旗はアラブ連合当時と同じデザインで、赤色もアラブ共和国連邦当時の赤色からアラブ連合当時のやや明るい赤色に戻された。
[編集] 汎アラブ色
国旗に使われている色は伝統的な汎アラブ色であり、イエメン、エジプト、スーダン、イラクとも共通する。二つの星はアラブ連合当時の二つの地域(シリアとエジプト)を象徴している。緑は正統カリフまたはファーティマ朝を、白はウマイヤ朝を、黒はアッバース朝を、赤は殉教者を表すとされるが、赤はヒジャーズのハーシム家を表すという見方もある。