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ザ・バトル・オブ・チャイナ - Wikipedia

ザ・バトル・オブ・チャイナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


ザ・バトル・オブ・チャイナ
The Battle of China
監督 フランク・キャプラ
アナトール・リトヴァク
製作 アナトール・リトヴァク
脚本 ジュリアス・J・エプスタイン
フィリップ・G・エプスタイン
音楽 ディミトリ・ティオムキン
撮影 ロバート・フラハティ
編集 ウィリアム・ホーンベック
配給 アメリカ合衆国の旗War Activities Committee
of the Motion Pictures Industry
公開 アメリカ合衆国の旗1944年
上映時間 65分
製作国 アメリカ合衆国
言語 英語
前作 ザ・バトル・オブ・ロシア
次作 ウォー・カムズ・トゥー・アメリカ
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ザ・バトル・オブ・チャイナ(The Battle of China)』は、フランク・キャプラ監督が製作したプロパガンダ映画Why We Fight (なぜ我々は戦うのか)』シリーズの6作目である。1944年(昭和19年)にアメリカで上映された。

欧米や中国ではニュースや報道番組において、現在でも日本軍による残虐行為の記録フィルムや記録写真として、これらの映画の一部が頻繁に使用されている。

目次

[編集] プロパガンダ映画『Why We Fight (なぜ我々は戦うのか)』

アメリカの第二次世界大戦参戦直後、アメリカ陸軍参謀総長ジョージ・マーシャルフランク・キャプラに対し、軍用教育映画シリーズの製作を要請した。キャプラは最初、畑違いの分野であることを理由に難色を示したが、マーシャルの説得に応じ、製作を引き受けた。

脚本は、当初ハリウッドの7人の作家チームが担当する予定だったが、キャプラは草稿の内容が共産主義的であるとして7人全員を解雇し、エプスタイン兄弟に一任することになった[1]

映像については“敵の残虐性とアメリカの正当性を敵自身に証明させる”というキャプラの方針に基づき、枢軸国陣営(ナチス・ドイツ大日本帝国イタリア)で撮影された映像が集められ、見た者が枢軸国陣営に対する反感・憎悪を感じる形になるまで繰り返し編集がおこなわれた。

映画製作の主な目的は、第二次世界大戦参戦後もアメリカ国民の間で依然として根強かった孤立主義に対処することであった。この点を考慮し、1942年から1945年にかけて製作された7本のシリーズ映画には『Why We Fight (なぜ我々は戦うのか)』という共通のタイトルが付けられた。

Why We Fight』シリーズはアメリカでは教育のため軍人に対し広く上映され、非常に多くの人間が視聴した最高傑作だとされている[2]。また、フランス語スペイン語ロシア語中国語の吹替版も作成され、現地で上映された[3]

[編集] 『ザ・バトル・オブ・チャイナ』

『ザ・バトル・オブ・チャイナ』は、このシリーズの6作目にあたり、シリーズ7作中で唯一、アジアでの戦闘を題材にしたものである。1944年にアメリカで、一般に劇場公開された。数人の評論家から問題点(内容に誇張が多い・中国人自身の問題に全く触れていない)を指摘されたことにより、一時的に回収されたが再度上映され、戦争終結までに約400万人が観ることになった[4]

[編集] 内容

本編の内容は、南京陥落後、「市民自らが掘らされた穴に落とされ、折り重なるように生き埋めにされるシーン」や、「殺された息子にすがり付き、泣き叫ぶ年老いた父親の姿」等が日本軍の残虐行為として編集されている。

[編集] 問題点

本作では「日本軍による銃殺刑のシーン」は、1927年中国国民党が行った中国共産党員に対する虐殺の映像、1928年製作のソ連映画『上海ドキュメント(Шанхайский документ)』の映像が使われている。また、廃墟となった上海南駅(南京ではない)で幼児が泣くシーンでは王小亭が撮影したフィルムが使用されている(詳細については後述)ことなどが判明している。

[編集] 第二次世界大戦終結後における展開

[編集] 中華民国

[編集] 中華人民共和国

[編集] 日本

  • 日本国内において、『ザ・バトル・オブ・チャイナ』が知られるようになったのは、1981年(昭和56年)テレビ朝日の朝のワイドショー、溝口泰男モーニングショー内で、中国国内で報道されている日本軍による残虐行為の記録フィルムとの名目で、作品の一部が放送されたのが切っ掛けであった。当時、この映像の真贋については論争となり、結果として、この映画の一部である事が判明するに至ったのだが、その結論については大きく報道されなかった。
  • 1982年(昭和57年)には、NHK特集として第二次世界大戦の他の記録フィルムと共にこの一部が放送された(短く「アメリカが製作した反日宣伝映画」とのキャプションが付いていた)。
  • 1989年(平成元年)昭和天皇崩御の際には、「彼の軍隊が行った蛮行」として世界中のメディアでこの映像が流された。

[編集] その他

  • 他にも、国内外の様々なテレビ番組や映画等で多用されており、全貌を把握するのは容易ではない。現在ではYouTube南京大虐殺と検索すると、この映画の一部を流用した動画がいくらでも見られる。

[編集] 劇中で使用されている映像について

撃たれているのは中国共産党員であり、撃っているのは蒋介石国民党軍である
撃たれているのは中国共産党員であり、撃っているのは蒋介石国民党軍である[6]

映像の多くは、枢軸国陣営によって撮影された映画、ニュースフィルムを編集したものである。ただし、一部のシーンにはソ連・中華民国など、連合国陣営による映像が使用されている。

後ろ手を縛られて座らされる市民の後頭部を、次々と撃ち抜いて射殺する場面は、この映画における最も有名な虐殺のシーンであるが、これは、ヤコフ・モイセエヴィチ・ブリオフ監督による1928年製作の『上海ドキュメント』というソ連映画の一部[7]であり、1927年蒋介石による共産党弾圧を糾弾する映像である。これがザ・バトル・オブ・チャイナでは国民党兵士とは分からないように映像の一部分がカットされ、トリミングされた上で、日本軍による虐殺シーンとして使われている[8]

これは1937年の上海南駅爆撃直後の有名な「Chinese Baby 《中國娃娃》」の写真であって、The Battle of Chinaのもととなる上海の爆撃現場を撮影中に映画とともにスチルカメラで撮影された写真であった。なお、この写真はLIFE雑誌に掲載された「中國娃娃」そのものではなく、Movieカメラの撮影画像のうちで最も近いシーンの一コマであり、撮影角度が中國娃娃とは若干異なる。「中國娃娃」は正しくは画像:Nanjing1937 BabyOnTracks.jpeg。
これは1937年の上海南駅爆撃直後の有名な「Chinese Baby 《中國娃娃》」の写真であって、The Battle of Chinaのもととなる上海の爆撃現場を撮影中に[9]映画とともにスチルカメラで撮影された写真であった。なお、この写真はLIFE雑誌に掲載された「中國娃娃」そのものではなく、Movieカメラの撮影画像のうちで最も近いシーンの一コマであり、撮影角度が中國娃娃とは若干異なる。「中國娃娃」は正しくは画像:Nanjing1937 BabyOnTracks.jpeg。
The Battle of Chinaの24分07秒から24分10秒までにある赤ん坊を一時座らせたシーン。中央の写真は『日寇暴行実録』にて「遭難後の父子」とされたもの。(キャプションは、東中野教授によるもの)
The Battle of Chinaの24分07秒から24分10秒までにある赤ん坊を一時座らせたシーン。中央の写真は『日寇暴行実録』にて「遭難後の父子」とされたもの。(キャプションは、東中野教授によるもの)

廃墟と化した駅のホーム上で、幼児が、一人泣いている有名な写真(LIFE1937年10月4日号誌上に掲載され全米で大きな反響を呼んだもの)も、この映画の一部として使用されている。映画には、写真が撮影された前後の状況も含まれていて、黒い中国服を着た人物が、線路を渡って幼児を救出してホームに一時座らせるまでと幼児を担架状のもので搬出するシーンが映っている。

国内外を問わず、南京大虐殺に関して主張する人々の多くが、何らかの形でこの映像の一部に触れている。

右の写真は、LIFE誌上には「子供を救出する場面」とのキャプションと共に南京大虐殺に先立つ1937年10月4日号掲載されているが、亜細亜大学教授東中野修道はこれを著書の中で「あらゆるところで南京事件の写真として流用されており、プロパガンダ写真を作っている最中のものである」とした[10]。同時に東中野修道は「南京事件があったかなかったかの検証ではなく、南京事件のものとされてきた写真を一枚づつ検証してみた結果、南京事件の写真と言えるものは一枚もなかった」と研究の目的と結果を述べている[11]

中國娃娃の撮影者が国民党宣伝部の王小亭であることが、近年になって松尾一郎亜細亜大学東中野修道教授の検証により発表された[12][13]


[編集] 映像の二次使用

日本でも長崎原爆資料館において、この映画からプリントされた写真が「虐殺直前連行された中国の人々」とのキャプションと共に長らく展示されていた。市民団体等から捏造資料であるとの指摘を受け、当時の橋本龍太郎首相は写真の信憑性の調査を関係省庁に指示し、結果的に信憑性に乏しい写真とされ176カ所の展示を差し替えるに至った[14]

アイリス・チャン著のザ・レイプ・オブ・ナンキンThe Rape of Nanking)にも、この映画の一部である右記の幼児写真等が、演出写真としてでなく、キャプション付きでドキュメント写真として掲載されている[15]

また、中国各所に点在している抗日記念館にも、これらの写真が必ず展示されており、この映画自体も上映されている。

[編集] 脚注

  1. ^ エプスタイン兄弟はシリーズ7作品全ての脚本を執筆した。
  2. ^ リチャード・M.バーサム『ノンフィクション映像史』創樹社 1984年
  3. ^ ジョン・W・ダワー『人種偏見』p20
  4. ^ ジョン・W・ダワー『人種偏見』p21-22
  5. ^ テレビ朝日日曜洋画劇場1989年放送分ではカットせず、そのまま放送された。
  6. ^ Film network「上海ドキュメント」の紹介
  7. ^ 田中秀雄著『映画に見る東アジアの近代』
  8. ^ 上海ドキュメント(ヤコフ・モイセエヴィチ・ブリオフ監督、1928年映像)の一部。 - YouTube
  9. ^ この時の攻撃は、日本では日本海軍が軍用の駅を爆破した戦果として報道された(『支那事変画報』朝日新聞社第4号)。爆撃前に上海で利用可能な鉄道駅は上海南駅のみとなっていたため、爆撃当時の上海南駅にいたのは民間人ばかりであり、民間人の死者が約170人にたいして中国軍人の死傷者は0人である[要出典]
  10. ^ ホームページ上にはいまだにNankingとされているものが数えただけで十数個は楽に見つかる例[1][2]
  11. ^ テレビ朝日『ビートたけしのTVタックル』2007年4月16日等にて発言
  12. ^ 東中野修道『南京事件「証拠写真」を検証する』
  13. ^諸君!』平成14年4月号
  14. ^ 1996年6月25日、1999年8月19日産経新聞
  15. ^ アイリス・チャン著『ザ・レイプ・オブ・ナンキン

[編集] 参考文献

ジョン・W・ダワー著・斎藤元一訳・猿谷要監修『人種偏見―太平洋戦争に見る日米摩擦の底流』(TBSブリタニカ・1987年9月21日) 原題:War without Mercy: Race and Power in the Pacific War(Faber and Faber, 1986) 改題『容赦なき戦争――太平洋戦争における人種差別』(平凡社[平凡社ライブラリー]・2001年)

[編集] 外部リンク

[編集] 関連事項

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