カトブレパス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カトブレパス(英語:catoblepas, ギリシア語:κατώβλεψ[1])は、ガイウス・プリニウス・セクンドゥス(大プリニウス)の『博物誌』に記された、西エチオピアに住むとされた架空の動物。ギリシャ語で「うつむく者」を意味する[2]。
大プリニウスの『博物誌』(8巻-32)によれば、西エチオピアに存在するという、当時ナイル川の源流であると信じられていたニグリスという泉の傍に住む動物である。非常に重い頭部を持ち、そのためいつも頭を地面に垂らしている。「カトブレパスの眼を見た人間は即死する」と締めくくられており、次節(8巻-33)において同様の邪視能力を持つ生物としてバジリスクを紹介している。外見は、重い頭部の他には「大きさはそこそこで、手足の動きは緩慢」[3]としか書かれておらず、はっきりしない。
18世紀-19世紀のフランスの博物学者ジョルジュ・キュヴィエは、アフリカに生息するヌーの姿と、バジリスクやゴルゴンの伝説が組み合わさってカトブレパスが生まれたのではないかと推測している。また、19世紀のフランスの小説家ギュスターヴ・フローベールの作品『聖アントワーヌの誘惑』には、垂れた豚の頭、水牛の体、空の腸のように細い首を持つ動物としてカトブレパスが登場している[2]。
現代のファンタジー作品では、カトブレパスの邪視は、専ら石化能力として描かれる[4]。
[編集] 註
- ^ ギリシア語の綴りは『オックスフォード英語辞典』(OED) 第2版(1989年)による。
- ^ a b ホルヘ・ルイス・ボルヘス 『幻獣辞典』 柳瀬尚紀 訳、晶文社、1978年、48-49ページ。
- ^ ガイウス・プリニウス・セクンドゥス 『プリニウスの博物誌』 中野定雄・中野里美・中野美代 訳、雄山閣出版、1986年、360ページ。
- ^ 安田均・グループSNE 『モンスター・コレクション 改訂版(中)』 富士見書房〈富士見ドラゴンブック〉、1996年、303ページ。