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アメリカ合衆国による沖縄統治 - Wikipedia

アメリカ合衆国による沖縄統治

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

アメリカ合衆国による沖縄統治
The Ryukyu Islands under United States administration
公用語 琉球語日本語英語
首都 那覇市
GDP 9億8530万ドル
(1970年)
一人当たり
国民所得
907ドル
(1970年)
統治開始
統治終了
1945年以降随時
1972年5月14日
通貨 USドル
時間帯
 – DST
UTC +9
なし

アメリカ合衆国による沖縄統治(アメリカがっしゅうこくによるおきなわとうち)とは、1945年昭和20年)のアメリカ軍による沖縄占領から、1972年(昭和47年)5月15日沖縄本土復帰にいたるまでの27年間に及ぶアメリカ合衆国による統治のことである。

目次

[編集] 概要

[編集] 軍政の開始

沖縄における住民の収容所
沖縄における住民の収容所

第二次世界大戦末期の1945年3月末から、アメリカ軍は沖縄諸島の各地に上陸を開始した。アメリカ軍は4月1日に沖縄本島に上陸し、そこの防衛にあたっていた日本軍と地上戦を繰り広げた(沖縄戦)。アメリカ軍は上陸時に、占領地の軍政機関として琉球列島米国軍政府を設立した。

6月に入ると日本軍は組織的抵抗が不可能となり、沖縄本島と幾つかの島嶼はアメリカ軍によって占領された。日本が降伏を表明した8月15日に沖縄の統治機関としてアメリカ軍と住民の協同組織『沖縄諮詢会』が設置された。1946年(昭和21)2月には、米軍が占領しつつも日本の主権が認められていた奄美群島も、鹿児島県から切断されて沖縄の軍政当局下に置かれた。

アメリカは当初、沖縄(琉球)は日本の帝国主義に支配された異民族であると認識しており、朝鮮半島と同じく国際連合による信託統治期間を設けた上で、日本から分離独立させることを計画していた。軍政もそのための準備段階として捉えられていたのであるが、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による日本占領期間中、ソビエト連邦を中心とした共産主義国との冷戦が意識されるようになり、琉球を信託統治にした場合、軍用地を自由に接収できなくなるほか、国連へ統治の実態の報告を毎年義務付けられているなど、ソ連と対抗し、沖縄を共産主義の防波堤として利用するには不都合であった。そこで、独立を前提とした信託統治計画を取り下げ、日本の潜在的な主権を認めつつ、軍による統治の形態をとることとした。そして、従来の軍政機関である琉球列島米国軍政府を琉球列島米国民政府に改組した。

アメリカ軍は日本軍の旧基地を獲得していたが、さらに演習地や補給用地、倉庫群などの用地として、次々に住民の土地を強制的に接収していった。これらの様子は「銃剣とブルドーザーによる土地接収」として例えられ、アメリカ軍の強権の代名詞となった。

[編集] 本土からの分離

1952年(昭和27年)の日本国との平和条約(サンフランシスコ講和条約)において、沖縄諸島の潜在的な日本の主権は確認されたが、引き続きアメリカ軍政下に置かれることとなった。また、統治機関である沖縄諮詢会は、『沖縄中央政府』『沖縄民政府』と名称を変えてきたが、1952年に『琉球政府』となった。

なお、与論島以北の奄美群島は1953年(昭和28年)12月25日に日本に返還された。このとき、米軍は「日本へのクリスマスプレゼント」だと冗談交じりに自画自賛していたという。しかし、奄美から沖縄本島へ労働に来ていた人々は「日本人」と言うこととなり、パスポートの所持の必要、公務員からの追放が行われるなど、いくつかの副作用がもたらされた。

[編集] 高等弁務官統治

1957年(昭和32年)からアメリカ本国の全権を委任された琉球列島高等弁務官による統治が行われるようになった。

歴代高等弁務官
  1. ジェームス・E・ムーア陸軍中将(1957年7月 - 1958年4月、1955年2月 - 1957年6月までは民政副長官)
  2. ドナルド・P・ブース陸軍中将(1958年5月 - 1961年1月)
  3. ポール・W・キャラウェイ陸軍中将(1961年2月 - 1964年7月)
  4. アルバート・ワトソン陸軍中将(1964年8月 - 1966年10月)
  5. フェルディナンド・T・アンガー陸軍中将(1966年11月 - 1969年1月)
  6. ジェームス・B・ランパート陸軍中将(1969年2月 - 1972年5月)

特に、第3代のキャラウェイ中将の統治は、「琉球」を多用して沖縄住民のナショナリズムを刺激して日本との分離政策を推し進めたり、強権を発動したりと、「キャラウェイ旋風」と呼ばれた。

[編集] 統治の終了

返還へのいきさつは沖縄返還を参照。

沖縄諸島は1972年(昭和47年)5月15日に日本へ返還され、沖縄県が復活した。

[編集] 政治

琉球列島高等弁務官のもとに琉球列島米国民政府が置かれ、琉球政府の上部組織として間接的(場合によっては直接的)に統治した。司法権を行使するために独自の裁判所(米国民政府裁判所)を設けていた。

琉球政府の長は行政主席で、初期の頃は米国民政府が直接任命していたが、後に立法院の意向を反映した任命に変わり、最終的には直接選挙制に移行した。任期は特に定められていなかったが、公選制導入時に3年となった。

立法院(議会)は一院制で、約30議席を20歳以上の琉球住民による直接選挙で選出した。任期は2年(後に3年)である。

[編集] 地方行政区画

地理的区分として、5の地区に分かれていた(1970年時点)。戦前や現代の「」の区分とは微妙に異なっている。

沖縄北部地区
沖縄中部地区
沖縄南部地区
宮古地区
八重山地区

[編集] 地理

奄美諸島琉球諸島で構成された。後に奄美諸島は1953年に日本に返還された。

琉球政府章典によると、その範囲は「北緯28度東経124度40分の点を起点として北緯24度東経122度、北緯24度東経133度、北緯27度東経131度50分、北緯27度東経128度18分、北緯28度東経128度18分の点を経て起点に至る線の内側」とされた。

[編集] 経済

沖縄戦の影響で経済基盤が破壊された沖縄では、通貨として日本円のほか、アメリカ軍の軍票であるB円が用いられた。1948年(昭和23年)から1958年(昭和33年)まではB円が唯一の通貨であったが、1958年以降はアメリカドルが使われた。

日本本土との往来は、パスポートが必要となるなど制限が行われた。しかし日本本土との経済圏が分離されたことで、地元の企業が多数設立されることになった。(戦前は他府県人の企業が沖縄県経済を牛耳っていた。)

また、アメリカ軍の基地が多数設置されたことにより、基地における雇用が確保された面もある。復帰直前の基地雇用者の大量解雇までは、沖縄の失業率は1%だった。大量解雇の発生要因は、ベトナム戦争の長期化による駐留米軍費の増大によるしわ寄せによるもの。

当時の主要産業は製糖業とパイナップル産業で、観光業は現在ほど盛んではなかった。当時の観光は戦跡を巡る慰霊目的の観光が多く、現在のようなリゾート目的の観光は余り盛んではなかった。

[編集] 交通

全域が島嶼という事情から、域外への移動や県内離島間の移動は海路や空路が主に利用されていた。

[編集] 道路

[編集] 住民

人口の大多数が、「沖縄県」に本籍[1]を有する「琉球住民」であった。在留外国人(米軍関係者を除く)で一番多かったのは「日本人」(沖縄県外に本籍を有する日本国民)で約18000人、アメリカ人約7500人、中国人約2000人であった。

[編集] 教育

本土と同じ6-3-3制であった。ただし、公立の小学校中学校を運営するのは市町村ではなく「教育区」という特別な公法人が担っていた。

高等学校は、政府立学校が39校、私立学校が4校あった。

大学短期大学を含む)は当時、以下の大学が存在していた。

[編集] 文化

[編集] 祝祭日

日付 名称 備考
1月1日 元日 本土の元日と同一日
1月15日 成人の日 本土の成人の日と同一日
春分 春分の日 本土の春分の日と同一日
4月1日 琉球政府創立記念日
4月29日 天皇誕生日 本土の天皇誕生日と同一日
5月3日 憲法記念日 本土の憲法記念日と同一日
5月5日 こどもの日 本土のこどもの日と同一日
5月第2日曜日 母の日
6月23日 慰霊の日 沖縄戦終結の日
旧暦7月15日 お盆の日
9月15日 としよりの日 本土の敬老の日と同一日
秋分 秋分の日 本土の秋分の日と同一日
10月の第2土曜日 体育の日
11月3日 文化の日 本土の文化の日と同一日
11月23日 勤労感謝の日 本土の勤労感謝の日と同一日

[編集] 統治下で起きた主な事件・事故

[編集] 脚注

  1. ^ 戸籍上はアメリカ統治期も一貫として「沖縄県」と表記されていた。

[編集] 関連項目

ウィキメディア・コモンズ

[編集] 外部リンク

復帰前の沖縄の統治機構
琉球列島米国民政府
高等弁務官民政府裁判所
琉球政府
行政主席立法院民裁判所
米軍統治下の沖縄住民統治機構の変遷
奄美群島 大島支庁→臨時北部南西諸島政庁奄美群島政府
沖縄群島 沖縄諮詢会沖縄民政府沖縄群島政府
宮古群島 宮古支庁→宮古民政府宮古群島政府
八重山群島 八重山支庁→八重山仮支庁→八重山民政府八重山群島政府
統一機構
臨時琉球諮詢委員会琉球臨時中央政府琉球政府
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